<阪神8-3中日>◇1日◇甲子園

 こんな痛快なゲームはないぞ!

 阪神が、2位中日に8-3と完勝し、ゲーム差を再び7・5と突き放した。3-3の同点から5回に勝ち越した後、圧巻は6回だ。新井貴浩の適時三塁打に続き、4番金本知憲が右翼ポール際に14号2ラン。「7月がヤマ場」と位置づけていたAK砲が、オレ竜を文字通り打ちのめした。5番林も今季初の猛打賞と、最強クリーンアップが完成。勝負の7月のスタートを最高の形で飾った。

 快勝劇のフィナーレは、アニキの華麗なダイビングキャッチだった。9回2死一塁。中日和田の打球は、左翼線へ切れるように伸びていく。その打球に金本は、体を投げ出して飛び込んだ。昨年オフに左ひざを手術し、40歳を迎えても若さあふれるプレー。最高の試合を最高に盛り上げて締めくくった。

 追いすがろうとする竜をたたきのめした。ヤマ場と位置づけていた7月。その大事な初戦で、頼れるAK砲が爆発した。猛虎の強さを見せつけた。圧巻の6回だ。中前打で出塁した先頭の関本を、3番新井が一撃でホームに迎え入れた。あと少しで本塁打の中堅フェンス直撃。必死に走った新井は三塁を陥れた。

 新井

 追い込まれていたので、とにかく何としても食らいついていこうと思ってバットを振った。いつもいつもアニキにかわいがってもらってるんで、まあよかったです。勝負強い方ですから、絶対に返してくれると思ってました。

 続いたのが金本だ。中日平井の低めの球を強く振り抜く。低い弾道のライナーが、強い浜風を切り裂き、右翼ポール際に突き刺さった。「(スタンドに入るのは)あの風ならあの高さしかない。難しい球?

 真っすぐらしいな。オレもフォークかと思ったんだけど」と振り返る。状況を読み、風を読み、狙い通りにとどめの1発を放った。その直後、広報に託したコメントは爆笑ものだった。

 「新井さんが三塁にお行きになられたので、楽に打席に入れました」。

 これには新井も「試合中のコメントもねえ…」と苦笑い。そして「金本さんには隙を見せてはいけない。試合後も、私生活も隙を見せることはあってはいけない」とやり返した。新井はこれで今季の中日戦は35打数18安打と驚異の打率5割1分4厘だ。金本も7打点と勝負所で打つ。最高のコンビの最高の仕事が、中日との直接対決で6勝2敗1分けに導いた。

 頼もしい主軸の活躍に、岡田監督は「月は変わってもやることは一緒や。新井は秋田でタイムリーが出てなかったけど、(今日は)3番の仕事だったと思う」と目を細めた。直接対決で差を詰めたい中日。3連戦の初戦が最も重要だった。その試合での完勝は、中日に計り知れないダメージを与えた。新井が言う。

 「7月最初をいいスタートで切れてよかった。重要な月だと思うんで、ゲーム差は考えずに明日からまた頑張りたい。毎日阪神タイガースらしい野球ができればと思う」。

 その“らしさ”をAKコンビが支えている。【福岡吉央】