<阪神8-3中日>◇1日◇甲子園

 完全復活を確信させる猛打ショーだった。7月初戦で、林威助が心地よい快音を甲子園に響かせた。先頭打者で迎えた2回。中日中田に2球で追い込まれてから真価を発揮した。ファウルで粘り、読んで打つ。最後は低めに沈むフォークを巧みに拾って、右前に運んだ。

 林

 そろそろフォークが来るかなと思って…。変化球を狙って打った感じです。(タイミングの取り方も)だいぶ良くなっている。

 スピードあふれるスイング、正確なバットコントロール…。そして投手との戦いに勝った。同点に追いつかれた直後の5回無死では、左腕小林の内角球を中前に運ぶ。勝ち越し劇を導く貴重な安打だった。6回にも右前打を放ち、今季初の猛打賞をマークした。電光掲示板の打率も、試合前の「・233」から「・277」にジャンプアップ。1割を切ったこともあったが、目標の3割も目前に迫る。

 一瞬の間合いが勝負を制する世界だ。いかにタイミングを取るか。昨年12月に右肩を手術。当初のリハビリプランを前倒しして、5月下旬に1軍復帰した。実戦勘を取り戻すため、工夫も欠かさない。試合前練習では打撃投手に、小学生が投げるようなスローボールを要求したこともある。

 林

 速い球は、体が慣れているから、ある程度打ち込めば打てるようになる。遅い球って、打つのが難しいんです。ためて打たないといけない。タイミングを取るにはいい練習になる。

 開幕からの懸案だった「5番問題」を解消させる働きぶりだ。6月終了時点で5番の打率は上位打線最低の2割1分2厘。わずか2本塁打にとどまっていた。クリーンアップの最後のピースも、これで埋まった。

 5試合連続安打に伸ばした林も自覚を込めて言う。「後半じゃないけど、7月は戦いもきつくなる。いいスタートを切れて良かったです」。長距離砲の復調により、打線の破壊力が増すのは間違いない。パワフルな林のバットがVロードを加速させる。【酒井俊作】