<横浜7-8阪神>◇6日◇横浜

 劇的な逆転勝利に沸くナインをよそに、藤川はクールに言い切った。「今日はただ投げただけです」。3点差をつけられた9回2死からの逆転劇だった。ともすれば緊張の糸が切れかねない場面でも集中力を保つ。どんな展開でも動じず、冷静な姿こそ、守護神の強さなのだ。

 9回裏に全神経を注ぐ。リードは1点。先頭仁志の出塁を避けなければならない場面だ。速球でカウントを整えると、最後はフォークで空振り三振を奪った。後続の2者も変化球を交えて抑え、勝利を運んだ。今季27セーブ目をマーク。通算100セーブに残り9個に迫る。球児の快投は、盤石のリリーフ陣に訪れた危機をかき消した。

 リリーフ陣に託した6回以降は、誤算続きだった。6回には渡辺が2失点し、同点に追いつかれる。8回から登板したウィリアムスは不調を極めた。速球を投げれば、ことごとくバットの芯でとらえられる。いきなり3連打を浴びるなど、昨年10月1日横浜戦以来の3失点。岡田監督も「ジェフが3点取られると思ってない。誰もあそこでなあ…」と首をかしげた。しかし、打線の爆発で、深い傷も少しばかり癒えた。ウィリアムスは感謝した。

 「自分の中で(制球を)外した感じはない。ビデオを見たりして研究したい。決して悪くはないんだ。チームが勝ってくれて、かなり救われた部分はあるね」

 独走優勝を果たすためにも、ウィリアムスの復調は不可欠だ。佳境を迎える8月には、最終候補に選ばれている藤川、久保田が北京五輪代表として離脱する可能性が高い。「FK」の留守を預かる、代役の守護神としても期待も大きい。久保チーフ投手コーチも言う。「代役?

 そうやな。1つ1つ課題をつぶしていきますよ」。北京五輪が約1カ月後に迫る。1度は勝ち越されながら、ウィリアムスは3勝目をマーク。予想外に転がり込んだ白星を、復調の“薬”にしなければならない。【酒井俊作】