日本ハム・ダルビッシュ有投手(21)が「五輪モード」で球宴へ臨む。7日、マツダオールスター2008(31日=京セラドーム大阪、8月1日=横浜)のファン投票、選手間投票の結果が発表され、ダルビッシュは両部門トップの「完全選出」で監督推薦だった昨年に続く2度目の出場を決めた。2イニング限定登板になりそうで「無理はしたくない」と8月の五輪本番を視野に入れてのマウンドを明言。快投なら狙える最優秀選手賞にも「無理でしょ」と関心を示さず、超無欲で星野ジャパンへの試運転の場にするつもりだ。

 全パ・リーグの大黒柱は、勝負どころを心得ていた。ダルビッシュが、星野ジャパンを優先させ、色気を封印した。日本中の誰もが、快投を期待するお祭り舞台。それでも今夏に重きを置く、軸足はぶれていなかった。2戦のうちいずれかの先発が有力。最長なら3イニング登板する可能性はあるが、あっさり否定し、賞レース参戦まで断念?

 した。

 ダルビッシュ

 MVP?

 無理だと思います。僕には無理でしょ。2回6Kでも…、いっても、優秀(選手賞)でしょ。9Kじゃない限りは。3イニング?

 無理はしたくないんで。

 この日、ライバル視察先のオランダでダルビッシュに期待する発言をした星野監督の思いをくんだかのような、決意表明だった。

 自覚の表れだ。昨年は楽天田中に敗れた、念願のファン投票選出。しかも、今年から始まった他球団の選手しか投票できない、選手間投票でもトップになった。勝ち星では楽天岩隈を3つ下回るが、ファン、選手の「2冠」は名実ともに認められた証し。選手間投票については「それが一番うれしい。岩隈さんとかの方が成績がいいのに」と素直に喜んだが、ただ浮かれているだけではなかった。

 球宴2戦目の翌日から北京五輪日本代表の直前合宿だけに「(球宴では)直球主体で思い切り腕を振りたいけれど…」と自重を示唆した。球宴後、8月13日の五輪野球競技の開幕まで、国内の強化試合は同月8、9日のパ選抜とセ選抜の2試合だけ。実戦登板は1試合の見込みだけに、球宴は打者感覚を養う格好の場でもある。力と力の直球勝負へのこだわりを捨て、多彩な変化球も交えた試運転になりそうだ。

 全パを率いる梨田監督も「全日本のエースでもあるし、誇りを持って投げてほしい」と期待しながらも、「1イニングないし2イニングだと思う」と過度な負担は避ける起用方針を口にした。第1戦の京セラドーム大阪なら、故郷での凱旋(がいせん)登板。奮起する材料が盛りだくさんだが、ダルビッシュはあくまで主役の座に関心を示さなかった。MVPは「いつも投手が注目されるので、野手にとってもらいたい」。悲願の金メダルへと続く道を見据えながら、最高のパフォーマンスを披露する。【高山通史】