<広島4-2横浜>◇26日◇広島

 2発の花火が夏の夜を彩った。広島は8回に石原のソロで同点。そして9回にアレックスの10号サヨナラ2ランが飛び出した。地元に戻って2試合目。2万人を超えた観客にようやく「夏休み初勝利」を届けた。ミスも多く出た試合だったが、ブラウン監督はアレックスの活躍にご満悦。ヒーローの助っ人にとっても観戦に訪れた親友の前でのうれしい一発になった。まだ夏休みは序盤。白星の花火をどんどん打ち上げたい。

 宇品港の花火大会が午後9時に終わったその30分後。広島市民にとって、もっとうれしい花火がスタジアムから打ち上がった。

 2-2の9回1死二塁。アレックスの打球は高々と夏の夜空に舞い上がり、左翼席にスーッと舞い降りた。ヒーローは喜びをかみしめるようにベース1周。熱い体に冷水シャワーの祝福がうれしかった。「ああいう場面で打席に立てるのは打者として喜ばしこと。しかも最高の結果で、信じられない」。お立ち台を降りても興奮は冷めない。

 モヤモヤを吹き飛ばした。3回の守備。1死から村田の打球処理をフェンス際で誤り、三塁打とした。その直後に先制点を奪われた。反省した。切り替えようと必死だった。5回に2死二塁から同点の左前打を放った。そして9回の第5打席で最高のスイング。横山の初球の高めの直球を完ぺきにとらえた。

 破格の笑顔には理由がある。来日したばかりの親友アーチーさんが練習からベンチでアレックスの一挙手一投足を見守った。冗談を交えてしゃべる様子は本当に楽しそう。元マイナーリーガーで99年からアレックスの個人トレーナーを務めるなど公私にわたる友人だ。「親友の前で打てて、こんなに幸せなことはない。夢のようだ」。

 練習前には登録抹消中ながら1軍練習に参加したルイスとも再開。「頼っていた投手がいなくなった。難しい状況を何とかしようと思うのは自然な気持ち。みんながそう思っているよ。でもあの表情を見て、戻ってくるんだなと感じた」。

 ルイスは確実に戻ってくるが、彼1人に頼る野球はできない。先発した宮崎の踏ん張り、石原のアーチ、そしてアレックスの一振り。全員の力を結集して横浜をひねり倒した。価値ある勝ちだ。【柏原誠】