<ソフトバンク2-10日本ハム>◇28日◇福岡ヤフードーム
日本ハムが一夜で2位に返り咲いた。敵地でソフトバンクに10-2と大勝した。右臀部(でんぶ)に痛みを抱える稲葉篤紀外野手(35)が、4番指名打者で2試合連続の先発強行出場。延長の末に2-3で惜敗した前夜の西武戦に続き、この日も2安打2打点と活躍した。北京五輪代表でチームを離れる主砲の気迫に引っ張られ、打線は14安打と爆発し、今季4度目の2ケタ10得点。負ければ前半戦2位ターンがなくなる崖っぷちで、何とか踏みとどまった。
不格好なフォームだった。いつもとは違う持ち味の全力疾走が、打線全体に響き渡った。初回。稲葉が満身創痍(そうい)の体で、傷ついた野手陣のハートに火をつけた。先制打の田中に続き、中前適時打を放つ。見せ場は、走者として残った1死一塁。小谷野の右中間二塁打で激走する。表情をゆがめ、右足を引きずるように三塁を蹴り、本塁へ滑り込んだ。「走りだせば、ある程度は(痛みは)大丈夫だから」。涼しい顔で振り返った執念で3点目のホームを陥れ、鮮やかな先制攻撃を完成させた。
猛攻の起点になる1プレーだった。右臀部(でんぶ)痛を抱えながらの強行出場。この日を含め、北京五輪の代表合宿合流まで残り2試合。連敗中のチームを救うため、DHながらスタメンで出場した。3回にも右前適時打で2安打2打点。そして、星野ジャパンでの予行演習のような初回の決死の走塁。5月24日中日以来となる今季4度目の2ケタ得点の爆発を呼んだのは、傷だらけの主砲が見せた全力プレーだった。
ここ10試合、3得点以下と低空飛行を続けてきた「極貧打線」が息を吹き返した。試合前、梨田監督が緊急ミーティングを開いた。首位西武に連敗し、乗り込んだ敵地での移動ゲーム。本来ならリラックスムードを優先させたい中で、指揮官はあえて緊張感を求めた。チームの危機的な状態を感じ取った、数分間。そんな思いを、稲葉は受け止めていた。「梨田監督が選手を集めたから。それがいい効果になった」。ベテランらしく若手主体の野手を完ぺきに乗せた。
29日を最後に、エースのダルビッシュとともに約1カ月間、チームを離れる。負傷部分は「(動きが)止まったり、ステップを踏んだりすると響く」という状態でも、フルスイングを続けている。試合前後のマッサージでの入念なケアは欠かさない。アルコールを受け付けない体質で、食事の際には、お茶や炭酸飲料が主。最近は愛飲するラインアップの1つにガラナ飲料を加えた。カフェインやタンニンが多く含まれ、疲労回復、滋養強壮に効果があるとされる。少しでも自分自身を好転させるように日常から気遣ってきた。
わずか1日で2位を奪回した。梨田監督は「(他選手とレベルが)違いすぎてポカーンと口を開けて見ていたよ。ギリギリのところでやってくれているよね」と目を細めた。日の丸のためにスイッチを切り替える前のラスト一戦。稲葉は攻守にフル貢献を約束した。「状態はよくなっている。明日(29日)は守りたい」。最高の区切りをつけ、世界一を目指す北京への旅に出る。【高山通史】




