<西武2-7楽天>◇26日◇西武ドーム

 

 楽天のエース、岩隈久志投手(27)が西武戦に先発し、7回8安打2失点で17勝目を挙げた。2日連続スライド登板で先制されたが、修正能力の高さで粘った。主砲山崎武が17号、18号の2発で援護した。5年ぶり20勝投手誕生も見えてきた。

 仕事を終えたころには、いつものエースに戻っていた。5回まで98球も、結局は7回で113球。岩隈がマウンドを降りた時には、すっかり勝ちゲームが出来上がっていた。「粘って、粘ってでした。悪いなりに試合をつくれたと思う」。今季17回目の勝利のハイタッチも、普段どおりの光景だった。

 技術よりも精神面で苦しんだ。24日のソフトバンク戦に先発予定だったが、2日連続で雨天中止となり、この日は人生初の再スライド。「気持ちの持って行き方が難しかった」と苦笑いした。絶好調なだけに、投げられないストレスが微妙に制球を狂わせた。それでも試合の中で修正できるのが今季の岩隈の真骨頂。勝利を重ねて築いた自信は、最後まで揺るがなかった。

 エースが投げる試合は負けない。チームの中に流れる共通意識は、打撃陣にも影響を及ぼす。野村監督は「岩隈が投げる時は攻守にリズムが出る。よく点が入るしな。これが信頼関係」と絶賛した。この日も先制されながら逆転、ダメ押しと効果的に得点が生まれた。信頼関係も要所で結果を出しているからこそ築かれる。8月の3勝はすべて大事なカードの初戦で挙げた。7月17日の日本代表落選からも気丈に投げ続け、無傷の5連勝。「プレーオフを目指して投げる試合は全部勝つつもりでいます」。最下位に沈むチームに、プレーオフ進出への光を照らし続けている。

 チームは8月を7勝6敗と白星が1つ先行。自身も自己記録を更新する17勝目を挙げた。大台の20勝はもちろん、沢村賞の話題まで飛び出す快進撃に「沢村賞?

 まだ僕には早いですよ」。それでも200投球回にはあと40回弱、残りの登板機会はあと5回程度。「1度KOされたらダメですね。でも頑張ります」と意欲を見せた。自らの不調も克服し、味方もそれに応えて援護する。エースを中心とした結束が崩れない限り、栄誉は向こうから近づいてくる。【小松正明】