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ソフトバンク育成枠出身の吉川弾でドロー

延長11回裏1死、吉川は左越えに同点本塁打を放つ(撮影・梅根麻紀)
延長11回裏1死、吉川は左越えに同点本塁打を放つ(撮影・梅根麻紀)

<ソフトバンク4-4西武>◇29日◇福岡ヤフードーム

 執念の引き分けだ。ソフトバンク今季初のドローは、不屈の精神を宿した育成枠出身の吉川元浩内野手(29)が主役だった。延長11回。西武に1点勝ち越されたその裏に、代打吉川が同点ソロを左翼席へ運んだ。プロ11年目、苦労の末に飛び出したプロ初アーチだった。主砲松中にも史上34人目、通算300号も飛び出した一戦。最後は守護神馬原で5時間ゲームを締め、今季最大9ゲーム差に広がる危機を逃れた。

 絶体絶命のピンチで王監督が代打に指名したのは吉川だった。1点ビハインドの延長11回。まだファンになじみは薄いかもしれない背番号67だ。グラマンとは初対決。「あまり深くは考えていなかった」。適度な? リラックス感が初球ストレートを狙わせた。強振した打球は人影が減り始めていた左翼スタンドで弾んだ。貴重な同点ソロが負けから引き分けに戻した。

 代打に送り込んだ王監督もおどけて笑った。「なんてったって吉川が見事な本塁打だった。いいところで打った。大したもんだ。初めて当たる投手の初球だろ?」。この日300本塁打を放った松中以上に賛辞を贈った。巨人を戦力外となり、トライアウトを経て育成枠で今季入団。新外国人の獲得交渉が不調だった影響で、7月末に支配下登録されたばかり。この日が1軍昇格から6試合目。4度の代打起用で3安打1打点と何とも勝負強さを発揮している。

 ファームでは今季通算100本塁打を達成した。プロ人生の大半を2軍で過ごした男が、遠回りでも記憶に残る初アーチを放った。家族3人が初めて福岡ヤフードームを訪れた試合。朝食に好物のウインナーを出して送り出した靖恵夫人(39)は「こんな日が来るなんて。1つ1つの積み重ねが今日になった」と涙ぐんだ。

 常に契約危機を感じながら生きてきた吉川ががけっぷちからチームを救った。王監督は「存在感を示してどんどん出番を勝ち取ってほしい」と、さらなる発奮を求めた。宮崎駿作品が好きで1軍昇格前には2人の子どもと「崖の上のポニョ」を見たばかり。今の吉川は「崖の上」へとはい上がる立場。「自信とかまではいきませんが、今のところはいい感じできています」。勝利こそつかめなかったが、杉内の快投や松中、森本とほかのヒーローを押しのけ、この日ばかりは5時間ゲームの主役だった。【押谷謙爾】

 [2008年8月30日10時56分 紙面から]


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