最速156キロ右腕、新日本石油ENEOS・田沢純一投手(22=横浜商大高)が11日、都内で会見を行い、メジャー挑戦する意向を表明した。日本のドラフト1巡目候補が、ドラフト前に直接米国球界入りを決断するのは史上初。レッドソックス、カブスなど米国の複数球団が田沢獲得に興味を示している。米国側と交渉解禁になるのは日本選手権2次予選が終了する10月11日以降で、契約は日本選手権(11月13日から11日間、京セラドーム大阪)終了後、可能になる。今秋のドラフトで日本球団から指名されても、指名球団との交渉期限が切れる来年1月31日以降にメジャー球団入りする不退転の決意を固めた。

 田沢が、真っすぐ前を向き、口を開いた。「自分の進路について、アメリカの方で挑戦してみたい気持ちが強いので今日発表しました」。公の場で初めてメジャー挑戦の思いを語った。

 なぜ日本ではなく、米国なのか。「(昨年11月の)W杯の日本代表の時、外国人選手との対戦を経験した。アメリカに挑戦しても、おもしろいんじゃないかと思って決意しました」。1月にメジャー挑戦を選択肢としてとらえ始め、大久保秀昭監督(39)、コーチ、両親と話し合いを続けた。最終決断は、都市対抗開幕直前の8月中旬だった。

 田沢には昨年11月のW杯以降、メジャー球団のスカウトが本格的な興味を示した。大久保監督は「少なくても5球団以上来ている」と話す。レッドソックス、カブス、マリナーズ、ブレーブス、ドジャースなどが実際にオープン戦や練習でグラウンドを訪れた。都市対抗はヤンキース、ジャイアンツ、タイガースなどのスカウトも視察。レッドソックスは3月の社会人野球東京大会から視察し、熱意は高い。田沢は希望球団は「(気持ちの)整理がついてないので、まだ分からない」と話すにとどめた。

 この日の午前中、日本のプロ全12球団の社長あてに、今ドラフトでの指名回避をお願いする旨のFAXを送信した。大久保監督は「日本の球団に失礼がないよう、ドラフト戦略にも影響がないように、なるべく早く発表したかった」と気遣った。日本のプロ球団が反発する声は耳に届いている。「彼本人は純粋な気持ちで挑戦したいと思っているので、ご理解いただきたい」とした。代理人は現在いない。交渉解禁後、必要と判断すれば契約する。

 日本野球連盟・鈴木副会長は「メジャーも実績がないアマチュア選手に高い契約金は出さない。契約もマイナーからだろう」と見通しを語った。すべてを覚悟の上で、決断した。「不安はあるけどチャレンジしたい。どこまで力を伸ばせるか試してみたい」。会見中、何度も「チャレンジ」の言葉を繰り返した。野茂氏が初めて海を渡った95年、9歳だった野球少年が、新たな挑戦に歩みを進める。【前田祐輔】