<中日4-7阪神>◇15日◇ナゴヤドーム

 いつまでもブレーキとは呼ばせない。代役一塁を懸命にこなす阪神高橋光のひと振りが、試合を動かした。2回表先頭で、センター左に目が覚めるようなソロアーチをたたき込んだ。古巣相手に2本目となる1発が、打線復活の呼び水となった。

 「何がうれしいって、チームが勝ったことがうれしい。ホームランは打った瞬間にいったと思った。狙い球なんてない。必死で振ったから。三塁打が出ればサイクル安打?

 出るわけないだろう!」

 会心の一打が快勝に結びつき、心からの笑顔をみせた。9月上旬の不振時に岡田監督が「一塁のところで攻撃が切れる」と奮起を促されていた。7日広島戦での代打ソロに続く4号ソロが、高橋光の答えだ。6番一塁で先発し、7回まで出場。ひじの不安などを考慮し3打席限定の出場を続けていたが、この日は4打席目まで立った。5回の二塁打に続いて7回に三遊間を破り、今季初の3安打固め打ちだ。

 猛打賞は昨季もなく、中日時代以来だった。練習前にはフリー打撃を終えた中日ウッズと談笑した。今や、戦力外通告を受けた古巣への特別な思いはない。阪神での初優勝に向け、できる限りのことをやると誓っている。

 中日時代からの習慣で、ユニホームを着ると両手首に細く切ったテーピングを巻く。「医学的な根拠はない。おまじないみたいなものですけど」。けがなどに悩まされてきたプロ人生でも、最良の時に向かって全力だ。【町田達彦】