<横浜1-14巨人>◇16日◇横浜
ユニホームの左ポケットの膨らみが心地よかった。昨年結婚した妻夕賀(ゆか)さんへささげる、初のウイニングボール。巨人久保裕也投手(28)は感慨深げに感謝の思いを口にした。「いつも笑顔で迎えてくれた。僕の話を聞いてくれて、心の支えになってくれました」。07年8月26日広島戦以来の白星は、忘れられない1勝となった。
突然の先発だった。試合前練習の終了間近、外野でのキャッチボール中に先発を伝えられた。試合は午後6時開始で、決まったのは5時をすぎてからだった。通常なら登板前日には伝えられるが、先発を隠すための処置。「何も聞いていなかったので、心の準備ができないまま試合に入った。でも落ち着いて投げられて良かったです」と、ホッとした表情を見せた。
ピンチでも動じなかった。3回2死満塁、打席には首位打者の内川。好打者相手にも、逃げずに攻めた。スライダーの後の2球目、内角高めの直球で二飛に打ち取った。「たまたま打ち損じてくれました」と謙遜(けんそん)したが、相手に傾きそうな流れを食い止めた。直球に多彩な変化球を織り交ぜ、横浜打線を牛耳った。
悔しさを白球に込めた。今季は開幕から2軍に甘んじた。9月11日に初昇格し、12日に初登板。「悔しい思いをしてきたし、そのうっぷんを晴らそうと思った」。巡ってきたチャンスを逃すわけにはいかなかった。8回6安打1失点に抑えた右腕に対して原監督は「本当にナイスピッチング。成長の跡が見られた」と評価した。「次もチャンスをもらえたら、気持ちで投げていきたい」。苦境をバネに一皮むけた姿が、輝いていた。【久保賢吾】



