<日本ハム2-0西武>◇26日◇札幌ドーム

 新生ライオンズが、ヤングレオの勢いで優勝まで乗り切った。シーズン前の評価は高くなかったが、日本人球団新記録44本塁打の「おかわり君」こと中村、首位打者争いをしている中島、果敢なスタートを繰り返し2年連続盗塁王が確定的な片岡らの個性が、相乗効果でチーム力を押し上げた。最後は4連敗で優勝が決まる史上初の珍Vでも、この勢いはクライマックスシリーズ(CS)最大の武器だ。

 今季最少の2安打に抑えられての完封負け。4連敗での他力Vは史上初という喜べない“おまけ”もついてしまった。それでも、負けたことは一瞬で忘れた。右翼席の西武ファン、そして試合後も球場に残ってセレモニーを見守った多くの日本ハムファンの温かい拍手が、悔しさを洗い流してくれた。最後の打者になった中村は「今日は打てませんでしたけど、優勝は優勝なんで、もうどうでもいいッス。悔しさを忘れさせてくれました。最高ッス」と満面の笑みを浮かべた。

 完敗Vでも、今季の胸のすくような豪快な戦いぶりが色あせることはない。渡辺監督のもとで、若獅子たちは伸び伸びとプレーし潜在能力を開花させた。盗塁王争いを独走する片岡の足を前面に出して、送りバントに頼らない攻撃を展開。松井稼頭央の退団後、ショートのレギュラーを任された中島は首位打者を争うまでに成長した。「おかわり君」こと中村も、持て余していたパワーをボールに伝える技術を身につけて、秋山らが持つシーズン本塁打の球団記録を更新した。カブレラ、和田が抜けた大きな穴を、若い力が見事に埋めてみせた。

 レギュラーのほとんどは4年前の優勝を経験していない。若い選手たちにとって「産みの苦しみ」は想像以上だった。片岡は「マジックが減るにつれ、いつもとは全然違う緊張感があった。でも、これを経験できたのは大きい」と前を向いた。この数日間の苦しみはしっかりと胸に刻み込んだ。この経験でひと回り成長したことを、日本一という結果で証明する。【広瀬雷太】