広島「さよなら」はシリーズのあとで
<広島6-3ヤクルト>◇28日◇広島
日本シリーズでまた会おう-。今季限りで幕を下ろす広島市民球場が28日の広島-ヤクルト戦で公式戦の全日程を終えた。広島市民に希望の光を放ってきた復興のシンボルが、51年の歴史にピリオドを打つ。しかし、カープが3位に入り、クライマックスシリーズを勝ち抜けば日本シリーズで戻ってくることができる。この日はそれをファンに約束するような快勝だった。誰もが34日後の“生還”を確信した。
33年前の古葉監督の胴上げに涙した男性も、さらにその昔、広島市民球場がバラック街の真ん中に突然現れた興奮を思い返している人もいただろう。
前田健太の投球フォームをまねする小学生、栗原健太の特大ホームランに震えた高校球児…。みんな、思いは同じだ。「ありがとう」。「カープが好き」。
何十年も前から1球、1打に命をかけた男たちがいた。それを受け継ぐ今の赤ヘルたちが、目いっぱいのプレーでファンに応えた。勝利の立役者、前田健は言った。「今年から背番号18を着けさせてもらい、何とかこの番号に恥じないようにと心がけてきた」。これがカープの伝統、これが広島市民球場が歩んだ姿だ。20歳右腕は7回を2失点で8勝目。大舞台できっちり仕事をした。
初回のアレックスの先制2ランで完全に勝ちモード。4回には前田健が自らを援護するプロ入り1号弾。そして栗原が、5回にダメ押しといえる2ランを左翼席に高々と打ち込んだ。
そして、この日の主役は3万を超える大観衆だった。球場は真っ赤に染まり、波打った。隣の人と肩が触れ合う、狭い座席。しかしその密着度が応援の一体感を出し、球場に体温をもたらしてきた。スクワット応援の“聖地”の外野では誰かれ構わず抱き合って、3発の祝砲を喜ぶ姿があった。
3182試合目。何回、メガホンをたたき、どれだけノドをからしたことか。カープうどんはおいしかったし、雨ざらしの2階席は寒かった。喫煙所とトイレが隣接する外野席は清潔感には欠けたけど趣があった。この日も、9回途中に登板した永川が勝利の輪を作り、スタンドの笑顔の花は満開になった。
カープ戦士たちは最後もファンに最高の試合を見せてくれた。来年から舞台は新球場に移る。いつか、今の市民球場のように新球場が朽ち落ちそうになるまで、今度もみんなで歴史と思い出を刻み込もう。いや、その前に日本シリーズか。「シミン」の楽しさをもう1度味わって、次の扉を開きたい。【柏原誠】
[2008年9月29日11時7分 紙面から]
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