来年3月開催の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)監督の最有力候補だった星野仙一氏(61=北京五輪日本代表監督)が22日、要請されても辞退する意向であることを明らかにした。すでに王貞治コミッショナー特別顧問(68)には伝えたもようだ。同氏は批判的な世論を考慮し、自らのホームページ上に「私がお引き受けすることはありません」とあらためて記した。WBC監督は27日に開かれる第2回体制検討会議で決定の運びだったが、再び白紙に戻った。

 WBC監督の最有力候補だった星野氏が、就任を依頼されても固辞する決断を下した。この日夜、同氏は自身のホームページ上で監督問題に言及。「わたし自身は変わらずWBCの日本代表監督就任を固辞するつもりでいることをあえて再度、このHPで表明しておきたい。これ以上、加藤コミッショナー、王さんに迷惑を掛けるわけにはいかない。自分で出処進退のケジメをつけるべきだと思った」と本心を明かした。

 星野氏を軸に進められてきた監督問題。15日に都内で開催された第1回WBC体制検討会議では、王コミッショナー特別顧問が「現役監督は難しい」と発言するなど、暗に“星野一本化”の方向性が示された。しかし、その後、球界内から疑問の声が続いたことで、ここにきて差し戻しの可能性をはらんでいた。

 まず、楽天野村監督が「出来レースじゃないの」とクレームをつけた。マリナーズのイチロー外野手も「北京の流れから(WBCを)リベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなど不可能」と選手の立場で監督問題に反応した。北京五輪でメダルを逃した直後、世間から相次いだ批判の声も収拾する気配が見えず、星野氏は思い悩んでいた。

 金メダルを狙った北京五輪で銅メダルさえ取れず惨敗を喫した星野ジャパン。帰国後、ソフトバンク監督だった王さんから傷心の星野氏のもとに電話が入った。星野氏は「勝負に敗れたオレに責任がある。でも王さんは、向こうから『うちの選手がふがいなくて申し訳なかった』と声を掛けてくれた。でもこれだけ自分のことで騒がれているからには、もう大先輩である王さんに迷惑は掛けられない」と監督辞退の心境を語った。また既に王監督には固辞を申し入れているようだ。

 またこの日、星野氏はホームページ上でも長女が心痛で入院していたことを明かした上で「娘たちに『パパ、ユニホームはもういやよ。こうまで悪者にされて。もう長生きすることの方を考えてちょうだい』といわれていたが、その娘の入院にまでことが及んで、これ以上は家族を巻き込むことはできないという気持ちになった」とつづった。

 監督問題ばかりに固執し、現状では日本球界としていかに世界一に向けて取り組むかという議論は棚上げになっている。その点について星野氏は「今はなにも言えない」と腹をくくっている。27日に第2回体制検討会議が開催されるが、星野氏の固辞で白紙へ。加藤コミッショナーは「月末までに決めないと」と話しているが、来月以降にずれ込む可能性も出てきた。【寺尾博和】