阪神真弓明信新監督の就任会見が27日、大阪市内のホテルで行われた。2年契約で年俸8000万円(推定)。背番号は「72」に決まった。第31代監督は守備力の充実をテーマに掲げ、先発投手の補強をさっそく要望した。球団側も応じる構えで、横浜三浦&ロッテ清水の両右腕がFA宣言した場合はすぐに獲得に乗り出す方針だ。真弓阪神がV奪還に向け、投手王国の建設に着手する。

 無数のフラッシュを浴びても、端正なマスクが揺らぐことはなかった。余計なリップサービスは必要ない。真弓新監督は「誠心誠意」という言葉を何度も繰り返した。シンプルでストレートな所信表明。そこから浮かび上がったのは、強烈な信念だ。将として、いかに勝つ集団を作り上げるか。就任した瞬間から、迷いはなかった。

 85年は最強打線のリードオフマンとして日本一に貢献した。しかし今、自らが描くビジョンは守備力の重視だ。「バックネットから見せてもらったが、野球は守りが確実。投手を含め、センターラインを中心に守れるチームが強い」。岡田阪神から引き継いた現在の戦力を見ると、豊富なブルペン陣を軸にその下地は十分にある。「あとはプラスアルファがあればいい」。遠慮がちに言葉をつないだが、補強の話題になると、その返答は切れ味鋭かった。

 「(FAで)できれば頼りになる選手を取ってほしい。(守備位置は)取れば、どこでもいい。特に願っているのは、ピッチャーだ」。おくすることなく、球団に投手の補強を要望してみせた。今季はシーズン終盤に先発ローテーションの駒不足が深刻となった。真弓監督が真っ先に着手するのが、投手王国の建設だ。「あと(リリーフ)の投手はレベルが高いが、先発は少し弱いという印象。できれば、先発で完投能力があるというか、体が強いのが条件に入るかな」。事前交渉が禁止されているため、具体名は挙げられないが、エース級の獲得を望んだ。

 新指揮官の思いは球団の方針とも一致している。坂井オーナーは、真弓発言を伝え聞き「見合うと思ったら積極的に(金は)出します。費用対効果にもよるし、マネーゲームにする必要はないが、なるべく希望はかなえたいと思う」と話した。南社長も「もちろん、意向に添えるようにしたい。FAや外国人など補強面を詰めていきたい」と期待に応える考えだ。阪神は、横浜三浦&ロッテ清水のWエースに関心を示している。真弓監督の願いをかなえるために、30億円という潤沢な補強資金を準備。FA宣言した場合は、すぐに獲得に動く予定だ。

 95年の引退から、来季は14年ぶりにタテジマに袖を通し、戦場に立つ。「今年にこういう話があるとは思わなかったが、ここ何年かはタイガースの力になりたいという気持ちがあった。微弱ながら、力になりたいと思った」。日本一という結果で、育ててもらった球団の恩に報いる。【田口真一郎】