動ける指揮官ことソフトバンク秋山幸二監督(46)が今度は「投手コーチ」になった。宮崎秋季キャンプ2日目の28日、ブルペン視察に向かうと、2年目左腕の森福に対し、右足を上げる際の間の取り方を実演指導した。「森福は球のスピードで抑える投手じゃない。コントロールや球種、タイミング、リズムで投げるタイプ。打者の打ちにくい間合いをつくったらいいということ」。右投げの秋山監督が左投げフォームで丁寧に見本を示した。4年目の高橋徹には腰に重心を置いた投球フォームを求めるなど、具体的な指示を飛ばし続けた。

 担当コーチの垣根を越えた指導が新体制の方針だった。同じブルペンにいた高山投手コーチも「監督は打者から見た視線で意見をしていただいた」と、現役時代に437発を放ったアーチストからの直接指導に感謝した。秋山監督はキャンプ前には森福に1本のDVDを手渡した。中身は日本ハム武田勝の投球シーン。「特徴が似ているし参考になるからね」とイメージを描きやすいよう予習の「教材」まで用意していた。

 セクションを越えた指導もさることながら、この日は指揮官自らがブルペン入り。スパイクを履いて、立ち投げで約20球を全力投球。球を受けた的山バッテリーコーチが「130キロは出ていた。すごい」とあぜんとする強肩を披露した。「ちょっと張り切りすぎて肩が痛い」と苦笑いした46歳は「ピッチングにも興味を持ってやりたい」とどこまでもどん欲だった。固定概念にとらわれない、秋山流指導がチーム強化に拍車をかけそうだ。【押谷謙爾】