<日本シリーズ:西武3-7巨人>◇第5戦◇6日◇西武ドーム

 西武にとって悪夢の第5戦だった。初戦の勝ちから中4日で先発したエース涌井秀章投手(22)は、6回まで2安打1失点と好投をしたが7回、巨人ラミレスのゴロが二塁ベースに当たって大きくはねる二塁打から、5連打を浴びてKOされた。西武は、チームリーダー中島裕之内野手(26)が左脇腹を痛め、細川亨捕手(28)は右肩を痛めて負傷退場した。エースが力尽き、負傷者も相次ぎ、対戦成績は2勝3敗。今季を突っ走ってきたレオ軍団ががけっぷちに追い込まれた。

 目のまわりは真っ赤にはれていた。負けられない一戦で、涌井が力尽きた。試合終了後、悔しさを押し隠すように、ロッカー室までの階段を無言で駆け上がった。短期決戦で抜群の強さを発揮してきた22歳が、ポストシーズン4戦目で初黒星。巨人に王手を許し、ガックリと肩を落とした。

 2-1の7回、4番ラミレスから5連打されて4点を失い、逆転された。力勝負が、ことごとく裏目に出た。「いつもなら緩い球を使っていたけど、力んで甘く入ってしまった」。同点にされ、脇谷に勝ち越し2点三塁打を許した。最速148キロの直球も、高めに抜ければ威力半減。6回まで2安打、失点は阿部に許したソロ1発だけだったが、集中力は突然切れた。エースとの心中を決めた渡辺監督も「ピンチで巨人の左打者にやられた。こればかりは、涌井を責めても仕方ない」と力なく話した。

 相次ぐ負傷アクシデントも痛かった。3回に女房役の細川、5回に内野の要の中島が退場。「気持ちの面でうまく切り替えられなくて、力でいかなきゃいけないと思ってしまった」と涌井。CSで2戦2勝、日本シリーズ開幕戦でも8回1失点と好投を支えた正捕手・細川の不在は、特に痛かった。急造バッテリーの銀仁朗に「お前に任せる」と託したが、負担をかけまいと気負った。打線も拙攻を繰り返し、援護がなかった。頼みのセンターライン2人が欠け、リードはわずか1点。エースにのしかかる重圧は回を追うごとに増した。自分で自分を追い込み、平常心を見失った。

 2勝3敗。頼みのエースで敗れ、追いつめられた。「まだ別に負けたわけじゃない。王手をかけられてから勝ったチームは過去にいくらでもある。苦しい中で勝ってこそ、強いチーム。次のゲームで負けたら終わり。なりふり構わずいきたい」。シーズンで何度も逆境をはね返してきた意地に、渡辺監督は期待した。残り2試合は総力戦。最終戦で、涌井を中継ぎ待機させる可能性もある。試合後のミーティングで、渡辺監督は言った。「手負いの獅子の強さを見せてやろう!」。【柴田猛夫】