アライバあらためイバアラです?

 「三井ゴールデングラブ賞」の表彰式が26日、東京都内で行われ、5年連続で受賞した荒木雅博二塁手(31)井端弘和遊撃手(33)の中日コンビが来春キャンプから守備位置を入れ替わることを明かした。すでに落合博満監督(54)から指令を受けており、新グラブも発注済み。オレ竜の象徴だった二遊間のコンバートが、新たなチームづくりの目玉となる。

 突拍子もない発言に笑いが起こった。受賞者のあいさつで荒木が口火を切った。「来年はショートでこの賞をとりたい」。井端も続いた。「来年はセカンドでとりたい」。ともに5年連続5度目の受賞。12球団NO・1と言われる二遊間コンビのコメントは周囲に冗談と受け止められた。だが、2人の決意表明だった。

 表彰式を終えた荒木は真顔で言った。「みんな冗談だと思っていたでしょうけど、本気ですよ。キャンプから練習します」。落合監督から2月の沖縄キャンプで練習するよう告げられ、それぞれ二塁手用、遊撃手用の新グラブを発注済みだという。井端を二塁へ、荒木を遊撃へ。衝撃のコンバート案は動きだしていた。

 落合監督が就任した04年に結成された「アライバ」コンビは、守りの野球を掲げるチームの象徴だった。指揮官自ら「12球団NO・1の二遊間」と自負する。では、なぜ2人を入れ替えるのか。井端は理由をこう説明した。「僕がヒザをケガした時に監督に言われた。僕はもともとセカンドだけど、新たな挑戦なんで野球観も広がると思います」。

 今年8月、井端が右ひざ靱帯(じんたい)損傷で登録抹消された。9月4日ヤクルト戦(神宮)で荒木が5年ぶりに遊撃を守った。試合後、落合監督は「荒木しかいないだろ。来年もこうなっている可能性はある。もう1段階上の野球を目指すのであればな」と来季の「遊撃荒木」を示唆していた。入れ替えの狙いはヒザに不安を抱える井端の負担軽減、そして球界を代表する二遊間となった2人が新たな挑戦をきっかけにさらにレベルアップすることだ。

 現在、荒木が左肩、井端は右ヒザの治療に専念しているため実際に始動するのは来春となる。「フタを開けてみれば同じかもしれないが、真剣に取り組むことが大事」。荒木が言うように2人の入れ替えが決定したわけではないが、結成6年目となる名手コンビに大きな転機が訪れたのは事実だ。【鈴木忠平】