“8回完全男”が帰ってきた。中日山井大介投手(30)が26日、北谷球場で行われたサムスン(韓国)戦で練習試合初登板。最速146キロをマークし、1回2安打1失点の成績を残した。07年日本シリーズ第5戦で日本ハムを8回完全に抑えたが、昨年は右ひじ痛で満足に働けずじまい。投球フォーム改造に取り組みながら2軍読谷でスロー調整を続けていた。練習試合無傷の6戦勝と波に乗るオレ竜に、もう1枚“大駒”が加わる。

 過去の苦悩を振り払うように、山井は思い切り腕を振った。サムスン戦6回に3番手で登場。先頭の4番打者を145キロ直球で空振り三振に仕留め「いける」と確信。続く5番打者への5球目にこの日最速146キロを計測した。関係者のどよめきの中、打球は右翼中村一のグラブへ。そこから1失点したが、最後の打者は切れ味鋭いスライダーで右飛に打ち取った。

 「146キロ?

 アドレナリンが出たんじゃないですか。球威とかそういうのはわからなかったけど、感じはよかった。スピードは求めていなかった」

 長いトンネルを抜けた。07年日本シリーズ第5戦で8回完全の離れ業を演じ、一躍ときの人になった。だが昨年は右ひじ痛でレギュラーシーズン出場はわずか2試合。輝かしい実績とのギャップに苦しみ「がまん?

 いつまでもできないですよ」とこぼすほど追い込まれた。巨人とのクライマックスシリーズ第2ステージ第2戦で復帰したが、2/3回2失点で救援失敗。再びトンネルに迷い込んだ。

 「8回完全」との決別が、復活への道しるべとなった。「あの投げ方をすればまた壊れる」。体への負担を減らすため、テークバックを浅くとり、体のひねりを抑えた新フォームに挑戦。キャンプも2軍読谷で別メニュー調整。ブルペンでの投球数を1000球程度に抑え、慎重にペースを上げてきた。打者に投げたのはフリー打撃で1回、ケース打撃で2回だけ。実質、この日が初の実戦登板だった。新フォームで結果を出し「キャンプでやってきたことが出せたのでよかった」と話した。

 今後はひじの状態を見ながら、ペースを上げていく。森バッテリーチーフコーチは「気持ちよく投げてたんじゃねえか。ただ、パンクの危険があるから(1軍に)上げない」と調整を急がせない方針。オープン戦登板をドーム球場に限定するなど、故障再発に対し細心の注意を払うことになりそうだ。

 開幕に間に合わせるかは今後の調整次第だが、球界屈指の球威を誇る右腕に復帰のメドが立ったのは大きな収穫。竜投に強力な武器が加わる。【村野

 森】

 [2009年2月27日10時23分

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