<阪神1-5ヤクルト>◇4日◇京セラドーム大阪

 虎史上最高の快速スターだ!

 阪神赤星憲広外野手(32)が4日、ヤクルト2回戦の3回2死から、今季初盗塁となる二盗を決めた。これで通算351盗塁となり、並んでいた“牛若丸”吉田義男(75=日刊スポーツ客員評論家)の通算350盗塁を抜き去り、球団最多記録を更新した。慢性的な持病となった首痛に加え、キャンプ中から腰痛を抱えていると思われるが、機動力を重視する真弓野球を先頭に立って実践。開幕2試合目で初の黒星を喫したが、明るい材料を提供した。

 熟練の技だった。ヤクルト先発の由規の左足が地面を離れた瞬間、土を蹴った。低めのスライダー。捕手相川が体勢を崩したところで勝負あった。低い重心のまま一気に加速し、二塁ベースにスライディング。遊撃手川島慶のタッチすら許さなかった。3回2死一塁、3番鳥谷の4球目。当たり前のように淡々と、赤星が金字塔を打ち立てた。

 「新記録達成よりもチームが負けたことの方が悔しい。(記録更新は)僕の中では通過点だと思っているので、これからも1つでも多くの盗塁を増やしていきたい」。

 今季初盗塁はプロ9年目にして通算351個目。並んでいた吉田義男を抜き去り、球団記録を更新した。自慢の足で流れを引き寄せ、2死一、二塁からは4番金本の中前適時打で生還した。170センチ、66キロ。ケガと戦いながら到達した「351」だから、人は称賛の声を送る。

 体調は万全ではない。この日の試合直前。アップの中で腰をひねる動きを行い、顔をしかめた。試合途中、岡野手チーフコーチが「行けるか?」と声をかけた。「行けます」。8回には2本の中前打をさばいた。ここで首脳陣はストップをかけた。8回表の守備を終えると、ベンチに下がった。岡コーチは「腰のバランスが良くない。(8回に)センター前の打球を処理した時に体勢が良くなくて、代えようかと判断した。長丁場なんで」と説明した。

 オープン戦のフル出場は3月28日オリックス戦(京セラドーム大阪)のみ。最終戦となった同29日の同カードは2打席で交代した。赤星は「キャンプから無理してたし、3月は思ったような練習ができなかった」と告白したが、体調不良の要因は腰痛だったとみられる。

 もともと、慢性的な首痛、左手のしびれなどに悩まされてきた。オフに精力的に首を鍛え続け、状態は良化しているというが、首痛に加え、新たな敵が現れたのか。心配は尽きない。だが機動力重視の真弓阪神にとっては、どうしても欠かせない存在。傷を負いながら、それでも虎の核弾頭として、大きな期待を背負い続ける。

 [2009年4月5日11時9分

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