<楽天2-1日本ハム>◇29日◇Kスタ宮城

 楽天田中将大投手(20)が、16年ぶりとなる開幕から4連続完投勝利で、野村克也監督(73)に通算1500勝をプレゼントした。田中は日本ハム打線を4安打1失点に抑え、圧巻の11奪三振だ。ここまで4試合で36回を投げ、防御率は0・50。大器は名将の下、3年目で花開いた。マー君から、ノムさんにウイニングボールが渡されて、楽天は再び首位タイに浮上した。

 やはりこの男が決めた。メモリアル勝利が決まった瞬間、田中は力を込めて拳を握り、自らの声に体を震わせた。興奮の中、野村監督にウイニングボールを「おめでとうございます」と手渡した。だがベンチに戻ると4試合連続で完投した疲労と達成感から、動きを止め、しばらくうつむいて立ち尽くした。顔をふき、気持ちを切り替えて向き直ると、お立ち台では「監督の1500勝のために投げました」。再び期待に応えるスターのマー君らしい笑顔に戻ってみせた。

 結果が背中を押した。日本ハム打線は初球から打ちに出ることで崩そうとしてきた。田中は逆に「向こうが早打ちだった。コントロール自体はよくなかったけど、どんどん手を出してくれた」と、冷静に分析していた。2回までに29球かかり、完投なら130球ペース。だが3、4回を5球で片付け短縮した。終わってみれば112球で27アウト。「完投は意識していなかった。自分の投球をすればいいと思った」。本人は納得しなくても最速は自己タイの152キロをマーク。精度を増したコントロールと球威に、結果は自然とついてきた。

 自らの野球人生を「指導者に恵まれたと思う。ここなら野球がうまくなれると思うところに入ってきた」と振り返る。中学時代、宝塚ボーイズではオリックス時代にイチローの打撃投手を務めていた奥村幸治監督(37)に投手の素質を見いだされた。駒大苫小牧では、甲子園で北海道に初の優勝旗をもたらし、連覇も達成した香田誉士史監督(38)のもとで、大投手への礎を築いた。

 そしてプロでは抽選の結果、名将野村監督の教えを受けることになった。「いろんなところで縁を感じた。プロに入って野村監督でよかったと思う」と素直に感謝する。野村監督も「ドラフトでくじが当たった時に、カードに『縁』って書いて渡したんだよ。本当に彼とは深い縁を感じるよ」とつぶやいた。恩師たちに勝利で報いてきた男にしてみれば、この日の勝利も必然だった。

 これで防御率、勝利数、勝率、奪三振の投手4冠をキープ。36回で被安打14、失点2という驚異的な数字で4試合連続完投勝利を成し遂げ、チームを再び首位タイに押し上げた。93年の小宮山、長谷川以来となる快記録で、自身初の月間MVPも確実にした。それでも「完ぺきを求めていかないと。そこに終わりはないし、求めなくなったらそこで終わり」と、表情を引き締めた。加速度的な成長を遂げる田中の姿は、再び名将野村監督の笑顔を生む。【小松正明】

 [2009年4月30日8時18分

 紙面から]ソーシャルブックマーク