<阪神6-0巨人>◇4日◇甲子園

 やっとやっと、巨人に勝った!!

 68年ぶり球団ワーストに並んでいた対G戦11連敗から大脱出だ。40代の下柳剛投手が6回0封で完封リレー演出の立役者に。前回屈辱にまみれた41年、主役は奇しくも鉄人、鉄腕と呼ばれた若林忠志。平成に受け継がれた鉄人への「系譜」は、68年経っても変わらなかった!

 知ったこっちゃない-。宿敵の連敗記録もアラフォー左腕に言わせれば、こうだ。「負ければワースト記録になっていたが…」という問いに、答えはひと言。「知らんわ」。藤川離脱による重圧もあったはずだが、これも一蹴。「なかった」。下柳がぶっきらぼうに巨人を斬った。変化球を低めに集め、いつも通りの粘りの投球を見せた。確かにプレッシャーとは無縁の内容で、6回を無失点。今季2勝目は大きな価値があるものだった。

 常に不安説がつきまとう年齢だ。オフに右ひざを手術し、16日には41歳の誕生日を迎える。ベテランの待遇に甘んじてもいいはずだが、それを良しとしなかった。シーズン前に首脳陣にこう申し入れていた。

 「オジン扱いしてくれんでいい」。

 冬の時期に奄美大島で過酷な自主トレを敢行。そこから生まれる自信があった。久保投手コーチはプロゴルファーの2人の愛娘がこの合宿に参加しており、その模様は耳に入っていた。「すごい練習をしていたらしいからね」。登板間隔を空けて先発させることも検討していたが、下柳の力強い言葉に配慮はやめた。この日の巨人戦は今季2度目の中5日でのマウンド。それでも20歳離れた巨人坂本を3打席無安打で翻弄(ほんろう)した。“オジン”ではなかった。

 ぶっきらぼうな男も、やはりこの場所は苦手だった。たった1人で上がったお立ち台。「心細いです」とつぶやいて、ファンを笑わせた。照れる表情は、マウンドよりもさらに若さを感じさせる。打のヒーローで同い年の金本は登板日に必ず打ってくれる。「信じていたので、冷静に見ていた。(巨人には)勝てたらいいな、と思っていた」。刻んできた年輪はダテではない。阪神には、今年も下柳という大黒柱がいる。【田口真一郎】

 [2009年5月5日11時57分

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