ナックル姫が涙の復活を果たした。関西独立リーグ神戸9クルーズの吉田えり投手(17)が明石戦の9回表に2番手で登板。4-5の緊迫した場面で、先頭打者の米田和弘捕手(25)から全6球ナックルで空振り三振を奪った。3月27日のリーグ開幕・大阪戦以来、右肩痛で長期離脱。この日は、運営会社の分配金未払い問題で揺れるリーグ再開の一戦。内野3000席のスタンドには外野の芝生席を含めて超満員3187人のファンが詰め掛ける人気ぶり。感謝と歓喜のあまり、思わず涙を浮かべた。
超満員の観客の拍手に笑顔で応えながら、吉田は泣いていた。新型インフルエンザによる中断を経て再開された無料の公式戦。63日ぶりの登板。右肩痛で投げられず、分配金未払い騒動まで表面化。つらく、苦しかったが、マウンドに上がることができる喜びをかみしめていた。「今日はいい1日だった」。ひと回り大きくなって帰ってきた。
「全部ナックルでいくで」。若林捕手のリードに、大きくうなずく。初球、外角へのストライクが決まり、ファウルでカウント2-2と追い込む。決め球ナックルで空を切らせた。1人だけで交代し、ベンチに戻ると「うれし涙と安心したのと」で涙ぐんだ。
「お披露目」を優先させた3月27日のデビュー戦でも三振を奪ったが、決め球は直球だった。「あのときとは全然違う。あのときはまだ投げたくなかった」と振り返る。同1日に合流したばかりで走り込みも足らず、ナックルを決め球に使えなかった。この日は違った。「走っていろんな準備をしてきて、挑むという気持ちになれました」と闘争心をむき出しにした。
注目を集めても試合で投げられず、貢献出来ない自分が歯がゆかった。普段は笑顔を絶やさないが、周囲が気をもむほど元気をなくした。家族が恋しくて、母の手料理が懐かしい時期もあった。この日は母広子さん(48)の姿がスタンドにあった。登板を期待し、3187人が駆けつけた。「お客さんがいてくれるから独立リーグが守られている。レベルアップして行く姿を皆さんに見て頂きたいです」と感謝の言葉を口にする。暗い話題が先行するリーグに、光をともした。【堀まどか】
[2009年5月30日8時56分
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