<巨人4-9ロッテ>◇21日◇東京ドーム

 デビューは渾身(こんしん)の力を込めた空振り三振だった。巨人のドラフト1位ルーキー大田泰示内野手(19)が21日、ロッテ4回戦で1軍初打席に立った。4-9の9回2死二塁、代打で登場。シコースキーの直球3球をすべて空振りした。結果こそ出なかったが、フルスイングの連続だった。東京ドームの打席では02年松井以来の背番号「55」の姿に、4万4362人の大観衆が沸いた。

 1軍初打席へ向かう場内アナウンスは、ファンのどよめきでかき消された。大田は緊張を解きほぐすように1度、素振りをした。打席で球審と捕手里崎に一礼。大音量で「オオタコール」が響く中、シコースキーに鋭い視線を向けた。

 「直球だけ狙って、思い切り振って本塁打になればいい」。腹は据わっていた。初球の内角150キロ。ありったけの力で振り抜いた。2球目は高めのボール球。149キロを空振りした。3球目もボール気味の外角直球に手を出しての空振り三振。悔しさを隠さず、何度もマウンドを見やった。

 準備はできていた。昇格から3試合目でつかんだ舞台。この日もベンチでは原監督の右斜め前に座り、先輩のプレーをつぶさに見た。一方で「代打大田」の声に備え、ベンチ裏のミラールームで出番を信じて、スイングを繰り返した。

 完全に振り遅れての三振という結果に「まだ1軍レベルになってないと感じました」と素直に言った。この姿勢が大田を動かす。17日、東京ドームへ行く前、午前8時過ぎに寮を出てジャイアンツ球場へ向かった。春から基礎を固めた地。岡崎監督はじめ2軍首脳陣の部屋の扉をたたいた。「2軍でやってきたことを精いっぱい出してきます」とあいさつした。「いろいろお世話になったので直接話したかった」と、恩師たちに決意を伝えた。

 「3球あるから3回振れば何か起こる」と送り出した、東海大相模の先輩でもある原監督は、「3球振れたところにプロとしてのスタートがある」と評価した。伊原ヘッドコーチは「(登録抹消中の)先発投手と入れ替わるかもしれないが、それまで1軍で栄養をつけてほしい」と、最低でもあと1試合は出場チャンスがあることを示唆した。スタンドからは拍手が送られた。三振でも温かかったのは、プロ初打席だから。大田は「バットに当てる練習をしないといけない。次にチャンスがあったら1発打てるようにしっかり準備したい」と謙虚に、そして前を向いた。結果より内容の詰まったデビュー戦。高みに登る糧とする。【古川真弥】

 [2009年6月22日8時42分

 紙面から]ソーシャルブックマーク