<巨人4-3広島>◇6月30日◇岐阜

 巨人が両リーグ最速の40勝で、貯金を20の大台に乗せた。1951年4月21日以来となる岐阜での公式戦で広島に競り勝った。雨の中、先発の東野峻投手(22)が8回途中まで4安打9奪三振2失点と好投し、4月17日以来の3勝目(4敗)をマーク。降板後、ふがいなさに怒りを爆発させたが、約2カ月分のうっぷんを晴らした。2位ヤクルトが敗れて4ゲーム差。戦国武将・織田信長が足掛かりとした岐阜城のふもとで、セ・リーグ制覇へ再び独走態勢を固めに入った。

 雨にぬれたざんばら髪を振り乱し、東野は敵を切り捨てるたびにほえた。58年ぶりに岐阜で行われた公式戦。マウンドの右後方には、金華山(328・9メートル)の頂に立つ岐阜城が夕空に映えていた。織田信長が拠点とし「天下布武」を掲げ、統一を目指した難攻不落の名城。「弱肉強食」がモットーの右腕が振り抜く腕は、名刀の切れ味があった。チームに貯金20をもたらしたのは、8回途中2失点で74日ぶり3勝目を挙げた若武者だった。

 痛快な真っ向勝負を挑んだ。最速149キロの直球とスピンの利いたスライダー。ほぼ2種類の球種で広島打線をねじ伏せていった。序盤から投手戦の重苦しい展開。躍動は余計に際立った。防御率リーグ2位でもここまで2勝。それでも「ゲームをつくれればそれでいい。それで勝てればなおさらいい」とこの日も不動心を通し、踏ん張りどころの6、7回を6人で終えた。22歳の堂々たる立ち居振る舞いはナインの胸を打った。6回を終え0-0。尾花投手総合コーチがラミレスのもとに近寄っていった。「東野を何とか援護してあげてくれ」。勝たせてやりたい、という思いは7回の集中打で結実した。

 強気で鳴らしていても、さすがに心が折れそうな時があった。好投が報われない日々。手を差し伸べてくれたのも仲間だった。正捕手の阿部は、サインに首を振って我を通す東野の向こうっ気が好きだ。勝てない時期に「カウント2-0になって、お前はどうしたい?」と聞かれた。「コーナーに決めて、見逃し三振を狙います」と主張したが、「それは違う。お前の持ち味を分かっていない。いつも思い切り腕を振って、空振り三振を狙っていけ」と諭されたという。この日の9奪三振中、空振りが8個。ベンチに戻ると「4点もらって気が抜けたか。でもボールは、本当に良かった」と笑顔の賛辞が待っていた。

 チームは4度目の挑戦で貯金を大台に乗せ、唯一負け越していたカープとの対戦成績も並んだ。戦国乱セを抜け出しつつある現状にも、大将・原監督は「数字は考えていない」と素っ気なかった。ただ課題の中盤を乗り越え、完投目前まで好投した東野を評する時は大きく目を見開いて言った。「1つのヤマを越えてくれた。(勝てない間は)粘りきれなかった6、7回のピッチング。それが4点を引き出した」。若き右腕が力強く示した「天下布武」への布石に、手応えを得た。【宮下敬至】

 [2009年7月1日9時19分

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