<日本ハム3-1楽天>◇6月30日◇札幌ドーム

 プロ3年目の日本ハム糸数敬作投手(24)がプロ初勝利を挙げた。楽天戦で6回2安打の好投。失点を2回の山崎武に浴びたソロ本塁打の1点に抑え、今季6試合目の先発でようやく結果を残した。度重なるけがに泣かされ、昨年までは1軍登板機会はなかったが今年、上手投げからサイドスローにし、生まれ変わった。チームはソフトバンクが勝ったため、単独首位返り咲きはならなかったものの、貯金を今季最多タイの12に伸ばした。

 亡き「オバー」への思いを支えに、苦悩のトンネルを抜けた。糸数が記念の1勝を、天国にささげた。「沖縄へ帰った時に、祖母へ見せたいと思います」。お立ち台で、ウイニングボールを固く握り締めた。3週間前の6月9日、祖母の前堂タツさんが85歳、心筋梗塞(こうそく)で急逝。「本当に勝てるように願って、楽しみにしてくれていたんで」と充実感に浸った。

 6回、63球。球速140キロ足らずの直球、変化球を丹念に低めへ集めて、コーナーに散らした。わずか2安打1失点。「毎イニング丁寧に投げようとして、本当に長い6回だった」と遠くを見つめた。明希乃夫人らの配慮から悲報を数日間知らなかったが、6月14日の中日戦で先発後に知らされた。交流戦終了後のオフを利用して、沖縄へ帰省。うるま市にある仏前に手を合わせた。登板7試合、先発6試合目で節目に到達した。

 プロ入り3年目。大学日本一投手の肩書をひっさげ、鳴り物入りで入団したが今季1軍へ初昇格した。祖母の死だけでなく、ここまで2年間も苦難の連続。結婚した07年オフに退寮して3LDKの愛の巣を構えたが、障害が立ちふさがった。「僕は霊感が強い方。家に幽霊がいた」。新居の2部屋で、霊の存在を感じたという。使用不能になり「1LDK」での暮らしを強いられ、新婚生活でも、つまずいた。

 野球でも“怪奇現象”に見舞われていたという。2軍で「今日から全力でプレーします」と周囲に宣言した、その日。ダッシュの際に左太ももを肉離れ。スコアボードを眺めながら外野をランニング中には突然、左足首をひねって離脱した。ちょうどシーズン前の帰省時、沖縄で「ユタ」と呼ばれる旧知の民間の霊能者に、良くないことが起きる1年と予言されていた。「本当になった」と的中してしまい、野球に集中できない日々だった。

 チームメートが苦笑するようなアクシデントも、悩みは深刻。2年目を終えたそのオフに引っ越しをして、故郷の沖縄へ年末年始に帰省した。再度、その「ユタ」から「今年は大丈夫」と太鼓判をもらった。プライドを捨て、オーバースローからサイドスローへ転向。お立ち台では「沖縄にいる糸数家、嫁の新垣家の家族の皆さん、1勝できました」と報告した。失意で故郷で待つ人たちへ、幸せを運んだ。【高山通史】

 [2009年7月1日9時21分

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