<巨人3-5中日>◇28日◇東京ドーム

 ついに1・5ゲーム差だ。プロ野球は後半戦がスタートし、中日が1発攻勢で首位巨人を粉砕した。5回に4番トニ・ブランコ内野手(28)が左越え29号ソロ、2-2の7回には3番森野将彦内野手が31歳の誕生日決勝アーチ、さらに8回にはクリーンアップそろいぶみとなる5番和田一浩外野手(37)の21号ソロでダメを押した。5月には最大9ゲーム差まで離されたが、05年7月以来4年ぶりの9連勝で巨人を射程圏にとらえた。

 敵地に4本のアーチがかかった。王者巨人を空中戦で下した。決めたのは森野だ。2-2で迎えた7回2死一塁。相手先発オビスポの直球をとらえた打球は高々と舞い上がり、右翼スタンド最前列に着弾した。14号決勝2ラン。「前に井端さんがぶつけられていたし、さすがにあの打席は熱くなった」。目の前で井端が2個目の死球を受け、三塁側ベンチは殺気立った。その怒りを白球にぶつけた。

 4回に小池が放った先制5号ソロが口火だった。5回にはブランコが左翼スタンドに29号ソロをたたき込んで2-0とリードを広げた。5回に同点とされたが森野の2ランで勝ち越し。3発を浴びせて巨人の怪腕オビスポをマウンドから引きずり降ろすと、8回には和田が越智から貴重な追加点となる21号ソロを左翼スタンドにライナーで突き刺した。過去、散々泣かされた東京ドームでの空中戦を逆にやり返した。「今年のうちの打線ならあるよ。向こうが一番よく知っているんじゃないか」。今季は4月3日開幕戦以来、巨人戦では球団史上初となるクリーンアップそろい踏みに落合監督は胸を張った。

 「クリーンアップが打てば勝つと言われるから、何とか僕も打たないと」。森野が言った。前半戦は打率2割8分、13本塁打、66打点だった。4番ブランコは本塁打、打点の2冠を突っ走り、「ベンちゃん」こと5番和田は首位打者をうかがっている。「BMW」と呼ばれるクリーンアップの中、森野は1人だけ不完全燃焼。だから、せめて勝利につながる打撃を-。そう誓って後半戦に臨んでいた。逆転優勝の成否を握るのは自分だと知っていた。

 偶然にも後半戦開幕日は31歳の誕生日だった。前夜は午前0時をまわり、日付が変わっても祝う気にはなれなかった。「こういう状況ですしね。やっぱり巨人戦での勝利が僕にとってのお祝いになるんですよ。まさか本当に打てるなんて…」。思いが通じたのか、昨年に続いて2年連続のバースデー弾が勝利を呼んだ。

 球宴前から続く勢いは、後半戦でも衰えなかった。連勝はついに4年ぶりの「9」にまで伸びた。「クリーンアップが打っているんだ。負けられるわけないだろう」。遅れていた森野も復調すれば、だれも止められない。落合監督の言葉は首位巨人をとらえたという自信に満ちていた。【鈴木忠平】

 [2009年7月29日9時58分

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