<阪神8-0横浜>◇29日◇甲子園

 土俵際に立つ阪神新井貴浩内野手(32)の願いが、打球に乗り移った。2点リードの3回、浜風にも乗り10号3ランとなって左翼席に届いた。「入ってくれと思って走ってました。体が自然と反応した」。見逃せば完全なボール球だったが、新井らしい豪快な一振りでチームに貴重な追加点をもたらした。

 忘れかけていた感触だった。9号本塁打を放ったのが6月16日の日本ハム戦(京セラドーム大阪)。実に27試合、113打席も本塁打から遠ざかり、チームが低迷する要因にも挙げられた。もちろん新井も自覚していた。この日のヒーローインタビューではファンに向かって「迷惑を掛けてますからね」と謝り、誠実な男らしい姿をのぞかせた。

 球宴期間中には本塁打王を獲得した05年の連続打撃フォーム写真を入手し、現在の打撃フォームを映した連続写真と見比べ、インパクト時のバットの動きの違いに気付き矯正していた。「後半戦始まって、気持ちをリセットして臨んでますから。また明日、明日です」。チームが浮上するには、この男の活躍が命運を握っていると言っても過言ではない。

 [2009年7月30日8時12分

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