<阪神2-9中日>◇13日◇京セラドーム大阪

 中日トニ・ブランコ内野手(28)がセ・リーグトップ独走の32号ソロで、劇的な逆転勝ちを呼び込んだ。2点を追う7回先頭の打席で、阪神久保の失投を左翼スタンドにたたき込み、この回6点を奪う猛攻の口火を切った。鮮やかな逆転勝ちで両リーグ60勝一番乗り。貯金を今季最多タイの20とし、首位巨人とのゲーム差を2・5に縮めた。

 特大アーチがナインのハートに火をつけた。一挙6点の大逆転の口火を切ったのは、不調からはい上がろうと必死の主砲ブランコだった。2点を追う7回、先頭で久保のフォークにしっかりと食らいついた。打球は大きな弧を描き、左翼席に飛び込む32号。3試合ぶりとなるアーチで、反撃ののろしを上げた。「バットの先っぽだったけど、入ってくれてうれしい。全部神様のおかげだよ」とまくしたてた。

 6回まで阪神久保の前にわずか3安打に抑えられていた。だが、この1発で1点差に迫ると、その後は打者一巡の猛攻でさらに5点を追加。久保をKOした。ブランコは9回にも中前打を放ち、9試合ぶりのマルチ安打。状態も徐々にのぼり調子だ。

 7月31日のヤクルト戦で館山から左ひじに死球を受け、負傷退場。それ以降、1度は克服したはずの、外角に逃げるボール球の変化球に手を出してしまうことが増えた。だが調子を取り戻そうと、とことん必死だった。

 2日前には、試合前のティー打撃で自らネットを横にずらし、体が前に突っ込まないよう、流し打ちに専念。そしてこの日は、落合監督からアドバイスをもらい、監督のトスでティー打撃を行った。「いつも言ってもらっていることだよ」。フリー打撃後には約15分間ミラールームにこもり、汗だくになってスイング。すべては試合で結果を残すためだった。

 それだけではない。死球で負傷退場した2日後からは、血流をよくし、治りを早めるひじ用のサポーターを練習時に着用。早期回復に努めた。この日は試合中も身につけて打席に立った。「できることはしておきたいんだ」。横浜からの移動日だった月曜日には、普段は仲間とともに出かけるはずの夕食にも同行せず。宿舎でしっかりと疲労回復に努め、この3連戦に備えていた。そんな、野球にひたむきな姿が、この日の逆転勝利をもたらした。

 試合後は、通訳を通じ「調子が戻るまでは野球に専念したい。もう少し結果が出てきたらにしてほしい」と、報道陣の取材を断り、笑顔もなかった。それだけ野球に集中している証拠。ブランコがかつての輝きを取り戻せば、首位巨人にとって、これ以上ない最大の驚異になる。【福岡吉央】

 [2009年8月14日8時12分

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