落合中日が未来のエースに「英才教育」を施す。高卒新人の最速153キロ右腕、伊藤準規投手(18)が来春の沖縄キャンプで1軍スタートするプランが12日、浮上した。今季終盤に頭角を現した来季先発候補を、落合博満監督(55)、森繁和ヘッドコーチ(54)の目の届くところで練習させ、順調ならば開幕1軍に抜てきする計画だ。中日は今オフのFA補強、トレード封印の方針を打ち出しているが、打倒・巨人の秘密兵器として“金の卵”の育成に本格的に乗り出す。

 今シーズン終盤に見せた大器の片りんが、首脳陣に強烈なインパクトを与えていた。「今年だってシーズンの最後(CS)は1軍にいたんだし(キャンプ1軍の)可能性は当然ある。ずっと調子がよければキャンプだけじゃなく、開幕から1軍で投げることだってありえる」。森ヘッドコーチは伊藤について来春沖縄での1軍スタート。そして順調ならば開幕1軍という英才教育プランを明かした。

 今季わずか1試合に登板しただけの投手に異例の期待度だが、伊藤にはそう思わせるだけの魅力がある。昨年ドラフト2位で指名され、開幕当初は右肩痛のため地道な体力強化が続いたが、8月に2軍戦で登板すると周囲の度肝を抜いた。9月30日巨人戦でプロ初登板。1回を無安打に抑えた。さらにファーム日本選手権で先発して勝利投手となり、CS第2ステージでも登板した。186センチの長身から繰り出される最速153キロの速球は自軍だけでなく、相手にも「将来のエース」という印象を与えた。

 今季は吉見が最多勝、チェンが最優秀防御率のタイトルを獲得するなど若手先発陣の台頭が目立ったが、それでもCSでは左右の両輪・吉見、チェンが巨人に屈した。伊藤が急成長すれば、中田、小笠原、朝倉らとともに打倒巨人のカギとなる先発陣にさらに厚みを加えることができる。

 この日、行われた初めての契約交渉では球団から推定年俸800万円を提示された。シーズンわずか15球で80万円アップ。「すごく目立ったから期待料です。本当に異例だと思う。めざましかった」。井手編成担当は将来への期待を込めた異例のアップを強調した。「来年は開幕からずっと1軍にいられるように頑張りたい。そのためにも春のキャンプで初日からアピールしていきたい」。長身、イケメン、潜在能力。スターになる要素をすべて持つ18歳が来季を飛躍の年にする。【鈴木忠平】

 [2009年11月13日11時20分

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