ソフトバンク松中信彦外野手(36)が、3月20日のシーズン開幕(日本ハム戦=札幌ドーム)出場へ「背水プラン」を明かした。28日、自主トレ先のグアムから帰国。昨年10月に手術した右ひざの影響で、まだダッシュができないなど、調整ペースが遅れていることを認めた。2月春季キャンプでは2クール目までにティー打撃を、3クール目以降にフリー打撃を再開する計画。3・20出場に意欲を見せつつも、確信を持てない複雑な心境を吐露した。

 グアムで日焼けした松中は、厳しい現実と向き合っていた。3週間の自主トレを打ち上げての帰国。まだ、練習メニューは全力ダッシュを控えるなど、右ひざのリハビリ段階から脱していない。「例年通りの厳しいトレーニングはできなかった。不安がないと言えば、うそになる」。通算325本塁打のスラッガーが、キャンプ目前にして「不安」の2文字を口にした。

 3月20日のシーズン開幕戦出場をあきらめてはいない。「自分の中では土台ができればやれると思っている。競争は激しいが、自分は絶対に負けない」。グアムではランニングの負荷を上げるとともに、腹筋や背筋の体幹強化、臀部(でんぶ)のトレーニングに重点を置いてきた。3・20出場へ道のりは平たんではないが、バットを封印してきた男の胸には青写真がある。

 ◆ティー打撃再開期

 2月キャンプの第2クール最終日(9日)までにティー打撃を行う。同時に右ひざの状態を見ながら、10メートルダッシュ、20メートルダッシュなど、全力走や急ストップできる段階を模索していく。

 ◆フリー打撃再開期

 キャンプ第3クール中(11~14日)にフリー打撃再開。

 ◆打ち込み期

 キャンプ後、2月26日から3月7日までの期間を本拠地で打ち込み期に充てる。

 ◆オープン戦出場期

 「ぶっつけ本番とは思っていない」(松中)と3月9日からの遠征6試合オープン戦で実戦調整。秋山監督の示すデッドライン「3月10日出場」にも間に合う。

 ただ、プロ14年目は、過去にも経験のない葛藤(かっとう)が待つだろう。自主トレ期にバットを振れなかった04年と比較しても、明らかにペースは遅い。04年はキャンプ第2クールでフリー打撃開始。実戦出場はキャンプ中の紅白戦だった。

 松中も「04年とは比べられない。あのときは自主トレで体をつくってのキャンプだった。今年はもっと野球ができる体をつくらないといけない」。その上で言った。「先は読めない。焦らずやるしかない」。

 松中の開幕1軍漏れは新人時代の97年のみ。客観的に見れば黄信号が灯っているが、松中には昨秋右ひざが壊れながらアーチを放ったように予想できない領域がある。「(開幕戦で)自分が打席に立っている姿をイメージしてやっていく」と松中。鷹ファンも、そのイメージが現実になるのを待っているはずだ。

 [2010年1月29日11時35分

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