<ソフトバンク4-4横浜>◇5日◇福岡ヤフードーム

 前へ、前へ-。ソフトバンクが「盗塁革命」を起こす。横浜とのオープン戦で走りに走って、8盗塁をマークした。この日4得点のうち、3得点が盗塁に絡んだものだった。小久保や多村、田上ら主力選手を温存した試合で、地上戦でも強みをアピール。幅のある攻撃パターンがさらに広がった。機動力野球が、秋山ホークス2年目のキーワードとなりそうだ。

 誰もが一塁に出塁しただけでは満足しない。チャンス消滅のリスクを伴う盗塁が、この日最大の演出だった。1試合8盗塁。オープン戦史上13年ぶりの快挙に、秋山幸二監督(47)も手応えは十分だ。「走れる人はみんな走らないとね。今のうちにね。どんどん走っていった方がいい」。納得した表情で試合を振り返った。

 長打がなくても、好機は広がる。小久保、多村、田上ら長打力を持つ主力陣が試合出場を見送り、調整に充てた。この日打線の10安打は、いずれも単打。それでも迫力不足と感じさせないのは、スピード感あふれる地上戦を仕掛けたからだ。貪欲(どんよく)な盗塁攻め。結果として実ったのは、初回と4回の攻撃だ。

 ◆1回裏

 1番本多が左前安打。2番川崎への2球目に二盗成功。3番川崎が左前打で続き一、三塁。川崎は3番松田の初球にスチール。無死二、三塁の好機は、松田の三ゴロの間の先制点を生んだ。

 川崎は3回裏にも横浜寺原から5球のけん制を受けながら、二盗を試みた。結果は失敗…。悔しそうな表情を二塁上で浮かべた男は、初回の得点について「そういう意識(常に次の塁を狙う意識)があるから、あの1点もあった」と胸を張った。

 ◆4回裏

 1死から5番長谷川が中前安打。6番柴原への4球目に二盗。柴原は二塁内野安打で出塁した後、一、三塁のケースから盗塁成功。8番村松の右前2点適時打を呼び込んだ。

 昨年リーグトップのチーム126盗塁を決めたように、走塁の意識は高い。だが、今季はさらにグレードアップ。現役時代4度の盗塁王に輝いた大石ヘッドコーチの加入で、投手が投球する前にスタートを切る「ギャンブルスタート」と、1歩目のタイミングを遅らせる「ディレードスチール」の極意が2月キャンプ中に選手へ伝えられた。大石ヘッドは走塁を重視する意味について、真意をのぞかせた。

 大石ヘッドコーチ

 (走者に)ノーマークになってほしくない。打者だけに集中させたくない。

 バッテリーが走者を気にかければ、配球は速球系に偏りやすく、打者のカウントも有利に持ち込みやすい。連打はなくても、1ヒットで得点が望める。ここまでオープン戦開幕以降、ソフトバンクは7試合(練習試合含む)で19盗塁。これもシーズンでの盗塁革命への“序走”に過ぎない。【松井周治】

 [2010年3月6日12時12分

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