天国のおじいちゃんに白星を!

 中日期待の2年目右腕、伊藤準規投手(19)が、6日に他界した祖父実さん(享年70)に開幕ローテ入りを果たして、プロ初勝利を捧げることを誓った。先発予定だった9日の西武戦は雨天中止となったが「おじいちゃんが望むのは僕が野球をやっている姿だと思う」と、告別式には参加せず、練習参加を志願。悲しみをこらえ「今年は絶対に勝って、いい報告がしたい」と力強く語った。

 目の前でプロ初勝利を見せたかった。子どものころから、野球に取り組む姿を温かく見守り続けてくれた大好きな祖父の突然の死。8日の通夜で実さんに最期の別れを告げた伊藤は、悲しみをこらえ、天国へと旅立った祖父に今季プロ初勝利を捧げることを誓った。

 伊藤

 今年、プロ初勝利することを約束したんです。初勝利を目の前で見せることはできなくなったけど、(天国で)見てくれていると思うので、勝ってウイニングボールを届けたい。一番喜んでくれると思うので、いい報告がしたいですね。

 伊藤のプロ入りを、そして中日ドラゴンズ入りを誰よりも喜んでくれたのが祖父だった。実さんは古くからの熱血の中日ファン。昨年も伊藤がファームの試合に登板するたびにナゴヤ球場に足を運んでくれたという。肺がん発症後も、1軍デビューを飾った昨年9月30日の巨人戦(ナゴヤドーム)を病床からテレビ観戦してくれたという。

 伊藤が実さんと最後に言葉を交わしたのは亡くなる前日の5日。見舞いに訪れた病院では「ここまでよう頑張った。(試合が生で)観られないのは残念だけど、これからも頑張れ」と激励を受け「今年絶対に勝って喜ばせるからね」と、固い約束を交わしたという。

 この日は、高校時代を過ごした岐阜での凱旋(がいせん)登板の予定だった。試合は雨天中止となり、球団からは午前11時からの告別式に参加することも認められたが、伊藤は「練習に参加します」と志願。悲しみを顔に出すことはなく、ほかのナインとともに汗を流した。

 伊藤

 亡くなる前日に話ができたし、お通夜にも行けた。きょうも出席したかったんですが、おじいちゃんが僕に何を一番望むかを考えたら、野球をしている姿だと思ったんです。

 この日の登板は雨で流れ、次回登板は11日以降に持ち越しとなったが、開幕ローテ入りに向け、準備に抜かりはない。悲しみと涙は胸の中にしまった。あとは前進あるのみ。必ずや今シーズン中にプロ初勝利をつかみ、実さんの墓前にウイニングボールを届けてみせる。【福岡吉央】

 [2010年3月10日10時20分

 紙面から]ソーシャルブックマーク