<日本ハム8-1ロッテ>◇13日◇東京ドーム

 日本ハム中田翔内野手(20)が、プロ入り3年目で初の開幕1軍切符を確実にした。開幕戦を想定したメンバーで臨んだロッテ戦に「7番左翼」で先発出場。3打数無安打と自慢のバットでは沈黙したが、3回に強肩で先制点を阻止する本塁補殺を決めるなど課題の守備面でアピール。オープン戦残り2試合になった14日ヤクルト戦(神宮)の1軍帯同も決まり、念願の開幕1軍スタートが極めて濃厚になった。

 中田が「合格通知」を、ほぼ手中に収めた。1軍に再合流したこの日、3打数無安打と音なしだったが、守備&走塁で全力プレーを披露。梨田監督は「今日は守備で貢献していたからね。(2軍へ)戻すのは簡単だから」と及第点を出した。14日のヤクルト戦を含め残り2戦に帯同する見通しで、プロ入り3年目で初の開幕1軍スタートが決定的になった。

 必死の挑戦を続け、実りの春が目前に見えてきた。ダルビッシュが先発した開幕戦のデモンストレーションの一戦。成長著しい守備で貢献した。0-0の3回1死一、二塁のピンチ。荻野貴の左前打を猛ダッシュで処理し、ワンバウンドのレーザービームで、本塁へ突入した二塁走者の里崎を刺した。先制点を阻止するビッグプレーに「1歩目が早くできたので良かった」。チームプレーを評価するカラーに適応できる能力を見せた。

 2回無死一、二塁のチャンスでは遊ゴロに倒れるも、一塁まで全力疾走し併殺を免れた。記録には表れないプレーもソツなくこなした。梨田監督も「今日は守備で貢献した。野球は打つだけじゃない」と成長を認めた。手薄な強打者、右打ちの外野手として貴重な存在で、今季は1軍での実戦起用で育成していく方針。中田が、そのために克服しなければいけない走守に安定感を増したことで、開幕1軍に抜てきされる可能性を高めた。

 厳しい助言をもらい、奮起した。不振にあえいでいた10日オリックス戦後、一時的にイースタン教育リーグへの出場を命じられた。「暫定2軍」の通告。11日の教育リーグのロッテ戦では丸刈りで臨み、1発を放った。その夜、母香織さんから電話をもらった。「楽しくなさそうだね。野球のことは分からないけど、オーダーを決める人たちが今のあんたを見たら楽しくなさそうに見える。今年で野球ができなくなるわけじゃないんだから」。不振の現状に「あなたよりも私の方が悔しい」とも言われた。「おかんに言われたことが図星だったので目が覚めた」。開き直りのきっかけをつかんだ。大阪桐蔭の先輩、西岡からはこの日「考えすぎずに思い切ってやれ」とアドバイスももらっていた。

 バットの構えのグリップ位置を高くし、昨季のイースタンの本塁打、打点の2冠獲得時へと戻した。この日も自分のスタイルを貫き、快音は出なかったが「結果はまたついてくるかな」との予兆は感じた。まずは最低限の目標だった開幕1軍メンバー入りの可能性が濃厚になった。勝負の3年目で、ようやく立てそうなスタートラインにも「もちろん(開幕1軍は)目標だけどいつまでも上にいられないのは分かってる」と危機感を持つ。もう後退せずに、中田が切り開いていくしかない道ができた。

 [2010年3月14日11時3分

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