<日本ハム3-5ソフトバンク>◇20日◇札幌ドーム

 エースは負けない!

 ソフトバンク杉内俊哉投手(29)が6回8安打3失点の粘投でチーム現役単独トップとなる通算80勝目を挙げた。2年ぶり2度目の開幕投手で自身初勝利。ダルビッシュに対戦6試合目(06年プレーオフ含む)で初めて投げ勝ち、かつてのエース斉藤を抜く節目の白星を手にした。シーズン初登板は負けなしの“不敗神話”も守った。

 童顔に満面の笑みが広がった。自身初の開幕戦勝利が決まると、杉内はベンチから立ち上がって歓喜のハイタッチに加わった。「勝ってよかった」。守護神馬原からウイニングボールを受け取り、安堵(あんど)のため息をついた。

 杉内

 粘りに粘った。思い切り力んでたけどね。(打線に)4点もらったから、それまでに抑えようと思って投げた。

 決して好調ではなかった。直球は浮き、決め球のチェンジアップも精度を欠いた。2年連続の奪三振王もマークした三振は4個だけ。3回に1点を失うと、6回には中田の2点適時打で1点差とされた。さらに1死二塁のピンチを迎えたが、金子誠を一ゴロ、田中を遊ゴロに打ち取ってリードを守り抜いた。

 数々の大投手の“壁”を打ち破る1勝だった。ダルビッシュには対戦6試合目で初勝利。「いい投手だけど、あれだけ点を取ってくれたらね」と野手陣に頭を下げた。通算奪三振数も1206個で近鉄野茂(1204個=日本国内のみ)を超えた。そして通算80勝目は、かつてのエース斉藤を抜いてチーム現役最多となった。「素直にうれしい。節目の80勝だし」。喜びもひとしおだった。

 あこがれだった存在をついに追い抜いた。11日の千葉マリン。右肩リハビリの近況報告に訪れた斉藤に、ロッカーで呼び止められた。調子を聞かれ「絶好調です」と答えた杉内にかけられた言葉はひと言だけだったという。「頑張れよ」。数年前までは登板翌日に必ずメールが来るなど数え切れない助言を受けてきたが、今や新エースとなった左腕にもうアドバイスは必要なかった。

 シーズン初登板は9戦7勝無敗となり“不敗神話”も守った。頼もしき大黒柱は「先発は長い回を投げて中継ぎの疲れをためないようにしないと」と緩んだほおを引き締めた。「今季中に通算100勝」の目標まで残り20勝。頂点を目指す1年は、まだ始まったばかりだ。

 [2010年3月21日12時10分

 紙面から]ソーシャルブックマーク