<ロッテ3-3日本ハム>◇27日◇千葉マリン

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が2戦連続の快投を演じながら今季初白星を逃した。ロッテ打線を2試合連続となる2ケタ、11奪三振で6回1失点。2点リードで中継ぎ陣へと託したが9回に守護神武田久が同点にされ、延長12回引き分けに終わった。注目の大砲・金泰均との公式戦初対決で韓国にネットで生中継され、ネット裏でヤンキース・スカウトも注目した一戦。存在感を十分に見せつけ、次回登板へと気持ちを切り替えた。

 プロデュースした4時間4分の死闘を、すがすがしく見届けた。ダルビッシュが、潔く結果を受け入れた。またも「K」を量産しても、今季初勝利は遠かった。武田久が乱れ、打線の援護も物足りなかった。「毎年(優勝争いの)後半戦になると引き分けが、勝ちに等しくなる。そう思えるようにしたい」。大黒柱らしく、最後まで振る舞った。

 力でロッテ打線を抑え込んだ。背中から受ける、最速7メートルを記録した強風に苦慮した。その追い風がバックネットにはね返ると、向かい風になる特異な条件。スライダーが変化しすぎ制球が乱れると直球、風を利用できる縦変化のカーブ主体へ、組み立てを変えた。最速149キロの直球、最遅で89キロのカーブ。最大60キロの緩急差で手玉にとった。

 三振11個は、すべて空振り。決め球にしたフォークも効果的で、降板した6回まで毎回三振を奪った。5回まで毎回走者を背負いながらも、要所を封じた。「気持ちの修正はできた。フォークもボールでいいと思ってワンバウンドで投げたら、効果的だった」。開幕ソフトバンク戦は9回完投も5失点。勝負強さを磨き直し、難条件も克服した。

 ポテンシャルを証明するように、ワールドワイドな熱視線を送られていた大一番だった。金泰均に密着している、韓国の国営放送KBSテレビがこの試合をネットでライブ中継。昨年3月のWBCでの激闘で、韓国では「ダル選手」と呼ばれ注目されているという。同局関係者によれば「特に女性の人気がすごいんですよ。それが金泰均と対戦するなら、すごいこと」と、しのぎを削る2人の姿を配信した。

 その公式戦初対決は3回に先制犠飛を献上し、ほか2打席は四球。「状態は良くないと思うけれど、ボールを振ってこない。僕はいい打者だと思ってます」と第1ラウンドの内容負けを認め、この先続く名勝負に思いをはせた。梨田監督が「野球だから3点あれば勝てるわけじゃない」とねぎらうほど、対打者、対ロッテに充実の内容だった。

 今オフにメジャー挑戦の可能性が取りざたされるだけに、ネット裏からヤンキース紀田スカウトが今季初視察した。「1年が終わってみないと何も言えないから」と慎重に言葉を選んだが、進化する剛腕に目を奪われた。この日は肌寒く、珍しく長袖アンダーシャツを着用。風も含めた自然現象と向き合い、三振の山を積み上げた。「気候とかマウンドとか、もう言い訳はしたくない。感覚はつかめました。奪三振率15・00を狙います」。勝利の女神は、振り向かなかった。ダルビッシュも後ろを振り向かなくていい、リアルな確信をつかんだ。【高山通史】

 [2010年3月28日11時4分

 紙面から]ソーシャルブックマーク