<巨人2-5ヤクルト>◇28日◇東京ドーム

 ヤクルト村中恭兵投手(22)が、プロ5年目で初めて巨人を倒した。8回を投げ、5安打2失点。昨年の左ひじ故障から復活した左腕が、相手先発全員から自己最多となる11三振を奪い、重量打線をねじ伏せた。チームは27日の由規に続く2戦連続の若手の快投。昨季5勝18敗1分けと大きく負け越した巨人に2勝1敗とし、東京ドームの試合では6年ぶりの同一カード勝ち越しを決めた。

 内野スタンドや左翼席に手を振る姿がぎこちない。内向的な性格の村中が、精いっぱいの形で声援に応えた。それでも、投球内容は迫力満点だった。

 「打線を見ると気が抜けないので、1人ずつ1人ずつ、丁寧にいきました」。驚異の破壊力を誇る強力打線の前に、187センチの長身で仁王立ちした。最速149キロの直球にカーブ、フォーク、今春キャンプで習得した、スライダーより落差がありカーブより手元で変化する「スラーブ」も面白いように決まった。許した5安打はすべて直球を打たれたもの。低めにコントロールされた変化球に、敵のバットは空を切るばかりだった。8回に坂本にソロ本塁打を浴び、プロ入り初完投はお預けとなったが、自己最多の11奪三振で巨人戦初勝利を挙げた。

 08年に6勝を挙げてブレークも、昨季は左ひじ痛の影響で1勝に終わった。「オフから技術的にも体力面でもしっかりやってきたのが自信になった」。地道な練習に加え、「超人」の教えも復活につながった。昨年12月、イベント参加のためチームメートの田中と乗車した大阪に向かう東海道新幹線で、偶然にも元ロッテの村田兆治氏(日刊スポーツ評論家)と会った。思い切って自己紹介すると、約10分間にわたってアドバイスをくれた。「投手は腹筋、背筋、遠投が大切」という言葉を参考に今季に備えた。右ひじの手術を乗り越え、40歳を過ぎても現役を続けた偉大な先輩のアドバイスもプラスとなった。

 チームは2連勝で、昨季かもにされた巨人に08年の開幕カード以来、2年ぶりの勝ち越し。敵地・東京ドームでは04年8月17~19日(2勝1敗)以来6年ぶりで、さらに開幕カードに限れば97年(2勝1敗)以来、13年ぶりの勝ち越しだ。高田監督が「去年は巨人に相性が悪かったから、いいスタートが切れた。今年はいい戦いができるんじゃないかな」と手応えを感じれば、荒木投手コーチも「巨人が(村中を)厄介と思ってくれれば」と話した。「巨人に勝たないと上に行けない。1年間投げて、15勝目指して頑張りたい」と村中。チームも波に乗るG倒となるはずだ。【由本裕貴】

 [2010年3月29日8時49分

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