<横浜6-14ロッテ>◇13日◇横浜

 仰天の逆転判定だ。ロッテ福浦和也内野手(34)が、史上初の「代打逆転満塁ビデオ弾」を放った。横浜に3-4とリードされた6回、1死満塁から右翼ポール際への微妙な一打は、いったんファウルと判定された。しかしその後のビデオ判定の結果、本塁打に変更された。今季から導入されたビデオ判定で、ファウルが本塁打に変更されたのは初のケース。これで勢いのついたチームは19安打14得点と爆発。西武が敗れたため、8日以来の首位返り咲きを果たした。

 世紀の「ひざカックン」だった。カウント1-2のバッティングカウント。代打・福浦は直球を待ちながらフォークに反応し、すくい上げた。高い弧を描き、打球は右翼ポールへ伸びていく。体をくの字にし、目を凝らし、打球の落下点を見守った。右翼ポールの左側からスライスし、外野席に落下した。横浜ファンも落胆から静まりかえっている。グランドスラムを確信し、伸び上がって喜びを表現しようとした。だが、その瞬間だった。一塁塁審はファウルの判定。歓喜のガッツポーズの途中で、ヒーローとなるはずの男の両ひざは、カックンと折れ曲がった。

 不満ありありの福浦は、自軍ベンチを振り返る。西村監督がベンチを出ると、審判団はビデオ判定実施を決め、ネット裏の審判員ブースで再確認。グラウンドに出てきた中村三塁塁審は「ビデオ判定の結果、ホームランに判定を変えます」と、アナウンスした。「幻の本塁打」とならずに済んだ福浦は、満面の笑みでダイヤモンドを1周した。

 世紀の大どんでん返し。何てったって、ファウルの判定が一転して代打逆転満塁本塁打だ。「打ったのはフォークです。満塁ホームランは2本目かな?

 (ソフトバンク)杉内から打って以来かな。日本シリーズでも1本打ったかな?

 代打満塁ホームランは初めてだよ。ビデオ判定?

 絶対に入っていると思っていた。『頼むぞ』という気持ちで待っていた。あれがファウルになるのとではチームもオレもえらい違い」と、思わず冗舌になる。

 ビデオ弾を皮切りに、ロッテは7回も2得点。8回には根元の代打1号ソロに、金泰均の10号3ランも飛び出した。9回も西岡の4号ソロが出て、19安打14点。豪快な勝ちっぷりで交流戦開幕2連勝。先発唐川が2回降板のアクシデントがあっても、中継ぎ陣が踏ん張る。3番手の秋親は、2回1安打3奪三振で今季1勝。ダイエー時代の04年9月8日ロッテ戦以来6年ぶりの白星だ。西武が敗れ、チームは首位に返り咲いた。西村監督は「今日の1番は福浦ですよ。満塁ですから。(ビデオ判定のない)去年だったらねえ。福浦だけではなく、根元、神戸の代打陣、代走の早坂も序盤から準備してくれている。中継ぎ陣も。秋親ね、1回戦力外になって、もう1回野球ができるのは、いいことですよね。みんながカバーしてくれるのが、今年のチームです」と一丸勝利を喜んだ。「ロッテ強し」の判定は覆りそうもない。【金子航】

 [2010年5月14日8時36分

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