<広島7-8楽天>◇14日◇マツダスタジアム

 楽天の山崎武司内野手(41)が歴代2位の年長代打満塁本塁打を放った。6回2死満塁で右翼へ5号アーチをかけた。今季は開幕から不調で、不動の4番のはずが先発を外れる土俵際で、反骨心をパワーに1発を決めた。41歳6カ月は、大島康徳(日本ハム)の43歳6カ月に次ぐ年長記録となる。チームも大ベテランの活躍に引っ張られ、延長10回の熱戦を制して交流戦2連勝となった。

 いつもの豪傑と人懐こい笑顔がまるでなかった。しのぎ合いを見届けた山崎は、真っ先にロッカー室を出ると怒気を含んでまず言った。「絶対、5番から実力で奪い返してやる。そう書いておいてくれ」。戦っている相手が広島じゃなかった。決勝打を放ち自軍の中軸に居座る背番号5、フィリップスに視線はあった。屈辱感にまみれた初の「代打」満塁本塁打だった。

 不調で2試合続けてスタメンを外れた。悔しさ。ふがいなさ。仲間も近寄りがたいオーラを充満させた。6回2死満塁の好機。三塁側ベンチの一番奥から、ぬらりと現れた。「準備はギリギリ。アドレナリンが出まくっていた」と極限状態だったが「カウント1-3からチェンジアップを投げる勇気は、あの投手にない。置きにきた直球を」と読みは変わらず冷静だった。

 広島先発スタルツのアウトハイ直球。左手1本でつかまえ、高い放物線を右翼席に、真上から落とした。下を向いたまま1周し、ベンチで5分間も沈黙し吐いたせりふは「今のオレの心境があれ。あれがすべてだな」。長い球史で2番目の年長代打グランドスラムには「何くそ、でずっとやってきた」、41歳6カ月の反骨心がぎっしり詰まっていた。

 「野球の神様はまだ、オレを見捨ててない」。一瞬感傷に浸った直後、これでもかと強い言葉を並べた。「内なる競争に勝つ。中日でも、オリックスでもそうだった。自分でまいた種は自分で刈り取る。結果ではね返す。現状は恥。うれしくも何ともない」とバスに消えた。この日フィリップス、中村紀が本塁打を放ち、打線のど真ん中を巡る争いは激戦。DH制のない交流戦のビジター戦では、大仕事を決めても山崎は劣勢だ。ギラついた競争が楽天に緊迫感を与え、浮上の推進力となる。【宮下敬至】

 [2010年5月15日9時7分

 紙面から]ソーシャルブックマーク