<西武2-6広島>◇12日◇西武ドーム

 大黒柱が戻ってきた。広島大竹寛投手(27)が粘りの投球を見せ、今季初勝利を挙げた。1回に2失点し、3回までに6四死球を与える不安定な立ち上がりながら、要所を締め6回2失点。2月の日南キャンプで右肩を痛めて開幕から出遅れていたが、待望の白星。主砲栗原が右手首骨折で離脱するピンチで踏みとどまり、チームに連勝をもたらした。

 ヒーローインタビューを終えてベンチ裏に引き揚げると、大竹は胸をなで下ろした。「良かった…」。短い言葉に正直な思いが込められていた。窮地に陥っても瀬戸際で踏ん張った。2回に満塁のピンチをしのぎ、3回にも2死満塁の危機を迎えた。積極的に振ってくる片岡に対し、最後は外角低めへのチェンジアップで空振り三振に片づけた。

 大竹

 内容は良くなかった。とにかく打者1人1人打ち取る気持ちで投げました。満塁はしょうがない。自分で招いてしまったので。何とか点を与えないようにとにかく粘るだけです。

 序盤から不調だった。1回、いきなり先頭片岡に四球を与え、あっさり2点を失った。中盤はセットポジションでの投球に切り替えてリズムに乗った。「セットの方がバランスも良かったので変えた」。1軍復帰2戦目で、本来の球威は戻っていない。それでも、スライダーなど変化球を駆使して西武打線を6回2失点に抑えた。

 試合開始前、大竹は西武ドームのベンチ裏で右肩に保温クリームを塗っていた。2月にブルペンで270球を投げて痛めた個所。入念にこすって準備完了した。「投げ始めると温かくなります。ちょっとした小さいことですけど、大きいですね」。負傷後から、登板日に始めたルーティンワークだった。今季初登板となった6月1日の日本ハム戦(札幌ドーム)以来、中10日での先発。練習ではキャッチボールなど投球を行う際、ゴムチューブで右肩に刺激を与えるのも日課だ。全力を出し切るために細心のケアを怠らない。

 負けられない理由があった。この日は06年以来、4年ぶりに故郷埼玉の西武ドームで登板。小学校、中学校時代の友人らが客席で力投を見守っていた。「西武ドームって言っても僕の地元からは遠いですが」。少年時代をすごした八潮市から同ドームまでは電車で約1時間半。長時間かけて応援に来てくれた旧友の目の前で、同球場での公式戦初勝利を挙げた。

 11日、右手首を骨折した栗原が離脱。4番がいない緊急事態での1戦だった。野村監督も「万全でない投球だったが、何とかしてくれた」とたたえる。123球の熱投を見せた大竹は言う。「栗原さんがいなくなったけど個人個人が勝つ気持ちを持ってやっていきたい」。交流戦の優勝争いを展開する西武を下しての連勝。大黒柱の今季初勝利が、何よりの収穫だった。【酒井俊作】

 [2010年6月13日11時16分

 紙面から]ソーシャルブックマーク