<西武1-7楽天>◇10日◇西武ドーム

 楽天4連勝の雌雄を決する局面には、この上ない男だった。同点の8回、2死一、二塁となりネクストバッターズサークルにランディー・ルイーズ内野手(32)がいた。「ボクが力を送ってホームランを打たせたんだ」と特殊才能を告白したばかりの4番。ここばかりはベンチから、遠く離れたブルペンからも仲間が両手を掲げ、指を小刻みに揺らし念を発した。おはこのハンドパワーを逆にもらい、満を持して西武涌井との勝負に向かう…そのときだった。

 緑豊かな狭山丘陵から迷い込んできた黒いチョウが寄り添ってきた。「大きなチョウだったよ。幸運を運んでくれた。練習の時も、前の打席でも止まったんだけど『何かあるのでは』と思ったよ」。プロボクシングの英雄ムハマド・アリ似の男に舞った本物のチョウ。まったく関係ない、といえばそれまでだが、吉兆と思える超・超プラス思考がルイーズにはあった。

 カウント1-1からの3球目、苦慮してきた外寄りスライダーだった。この日初対戦の涌井。巨人ラミレスからもらった「日本投手の直球は140キロ台後半。だが徹底して制球し、変化球でしとめる」との助言がよりどころだった。昨季の沢村賞投手も例外ではなく、頭と軸を残し中堅左へ運んだ。決勝5号3ラン。力をもらったみんなの笑顔が待っていた。

 名物の長い階段も初体験。息継ぎしながらも栄養補給のバナナを手に「(スペイン語でチョウの意味の)マリポーサ!」と上機嫌だった。いつも前向きに。楽天本来のチームカラーをルイーズも彩る。実は借金5は、初の2位でクライマックスシリーズに進出した昨年とまったく同ペース。天真らんまんに差を詰める。【宮下敬至】

 [2010年7月11日8時47分

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