<中日7-1巨人>◇10日◇ナゴヤドーム

 尾張のプリンスがGキラーに名乗りを上げた。4年目の中日堂上直倫内野手(21)が2回に満塁走者を一掃する先制の適時三塁打を放ち、巨人戦連勝のヒーローになった。父照さん(59)は元中日投手、兄剛裕(25)はチームメートという地元期待のサラブレッドが、本拠地ナゴヤドームで初のお立ち台に。今季巨人戦4カード目にして初の勝ち越し。最大8ゲームあった差を5・5に縮め、さあ追撃モード全開だ!

 地元で初めて上がったお立ち台。今季最多となる観客3万8326人の前でヒーローインタビューを受けた堂上直は、緊張と興奮で声を震わせた。

 「ずっとこの場所に立ちたいと思っていたので、夢がかなってうれしいです。いつもチャンスで打てなかった。やっとチームの役に立てた」

 巨人戦4カード目にして初めて勝ち越しに成功。今カード2つ目の勝ち星を運んだのは間違いなく背番号1のバットだった。

 迷いなく振り抜いた。2回1死満塁。カウント0-2から巨人藤井の外角スライダーをつかまえた。打球は左翼ラミレスと中堅松本の間を破った。ボールが転々とする間に一気に三塁に到達した。

 「ちょっと(バットの)先立ったけど、角度が良かったんで落ちると思った。足が遅いんで三塁まで行けるとは…」

 3点適時打はプロ初の三塁打。そして6試合連続となるヒットだった。

 後輩たちに向けたエールでもあった。今年2月、母校・愛工大名電に悲劇が起こった。野球部の2年生部員がトレーニングを兼ねたランニング中に乗用車にはねられて亡くなった。チームは春の県大会で初戦敗退。ノーシードの同校は11日、夏の愛知大会初戦を迎える。

 同校の倉野光生監督(51)は「あの子たち(堂上兄弟)の活躍が今、励みになっている」と話す。今年は恒例となっていた大会前の野球部訪問は封印した。1軍での活躍が一番の激励になると信じている。

 立場はあくまでも2軍調整中の井端の代役-。ポジションが保証されているわけでもない。落合監督は「抜群に良くなったわけじゃないけど、脇は固まりつつある」と独特の表現で打線を評した。井端はウエスタン・リーグ、ソフトバンク戦(雁ノ巣)に出場し、2試合連続のヒットを記録した。

 「今は自分のことを考えるだけで精いっぱい。他の人のことは考えられません」

 これからが本当の勝負。堂上直は試合後も約1時間の打撃練習に取り組んだ。【桝井聡】

 [2010年7月11日11時20分

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