<ヤクルト5-9阪神>◇17日◇神宮

 阪神が退場者2人を出す乱戦を制し、首位巨人に1・5と迫った。5点リードの4回、一塁塁審のアウトの判定に激高した2番平野恵一内野手(31)が、ヘルメットを地面にたたきつける侮辱行為で退場。これに怒った真弓監督ら首脳陣がベンチを飛びだし、塁審の胸を突く暴力行為で和田打撃コーチも退場処分となった。球団史上4度目の複数退場と荒れたが、6連勝中だったヤクルトに12安打9得点で完勝。夏本番を迎え、阪神はさらに熱くなる。

 巨人追撃への執念が、ほとばしった。4回2死三塁。二ゴロを放った平野は頭から一塁に飛び込んだ。微妙なタイミングだったが、アウトの判定を聞くと、思わずヘルメットを地面にたたきつけた。一塁の笠原塁審が右手を突き上げて退場を宣告すると、岡野手チーフコーチが先頭を切って飛びだし、真弓監督、木戸ヘッドコーチら首脳陣が一塁付近に走った。

 「あんなんで、退場になるんか!」。首脳陣と審判団が口論を繰り広げる中で、笠原塁審の胸を突いたとして和田打撃コーチも退場処分を受けた。13日巨人戦の同点の9回。高橋の打球を左翼藤川俊が滑り込みながら捕球したかに見えたが、三塁塁審を務めた笠原塁審は“セーフ”と判定し、真弓監督らが抗議した。阪神にとっては再び納得しがたい判定。和田コーチは、暴力行為は否定しつつ「選手は熱い気持ちでやっている。我々が放っておく訳にはいかない」と、熱い気持ちを前面に出した。

 正念場の一戦だった。巨人3連戦の初戦を延長12回の末に落とし、2戦連続で雨天中止。前夜は拙攻で接戦を落とした。この日負けていれば、2カ月ぶりの3連敗。巨人追撃どころか、3位中日に迫られる恐れもあった。試合は序盤からリードする展開だったが、平野がセーフならダメ押しの7点目が入っていた。抗議の場面、珍しく声を荒らげた真弓監督は「微妙(な判定)というよりも、あれぐらいで退場というのもね」。就任以来、「判定が覆る訳でもない」と冷静にベンチで見つめることが多かったが、荒々しい表情で勝利への執念をあらわにした。

 首脳陣とナインが闘争心をむき出しにして、ヤクルトに流れを渡さなかった。打っては12安打9得点。4点リードで迎えた9回2死一、三塁では、守護神の藤川球を投入。石橋をたたいてでも、白星をつかみとろうとした。真弓監督は「試合中はみんな集中しているし、興奮している。ああいうことは出てくる。絶対に落とせない試合だった」と興奮気味に振り返った。退場直後に左翼奥のクラブハウスで勝利を見届けた平野は、チーム全員に声をかけて回った。「僕は1球に命をかけてやっている。チームに迷惑をかけてしまったのは申し訳ない。和田コーチには、申し訳ない気持ちと感謝の気持ちがある」。

 阪神では8年ぶりの複数退場で大荒れの雰囲気が神宮を包んだが、3連敗を阻止。首位巨人が負けて、ゲーム差は1・5。猛暑の到来とともに、真弓阪神はもっと熱くなる。【田口真一郎】

 [2010年7月18日8時36分

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