<ヤクルト1-7横浜>◇31日◇郡山

 最後の打者を三ゴロに打ち取っても、横浜大家友和投手(34)はガッツポーズ1つしなかった。村田と最初にハイタッチをすると、他のナインと次々に手を合わせた。日本球界初となる2安打完投勝利。メジャーを含めても05年ブルワーズ在籍時以来の快投だったが「チームが勝つことが一番」という大家らしく、いつもの1勝と同じように振る舞った。

 丁寧に低めを突き、動く球をコーナーに投げ分けた。雨がぱらつく天候もあり、早いカウントから打ってきたヤクルト打線を緩急でいなした。5回、宮本に許した三塁打以外は、強い当たりはなかった。「ここで完投できるというのは僕の頭にはなかった。うまくいきすぎ。お客さんが声をかけてくれたので、気持ちよく投げられました」と、お立ち台でファンに感謝した。

 チームの勝利が何よりだが、長いイニングを投げたい気持ちはひそかに持っていた。8回を投げ終えベンチに戻ると「日本で完投したことはないんで、わがままを言わせてください」と完投を志願した。首脳陣は、9回は山口の投入を考えていたが、大家の球数の少なさと、この日の安定感から続投が許された。

 運もあった。6回、味方の攻撃中に花火が上がった。約10分間、この日の試合とは関係ない花火のため、登板中に上がる可能性もあったが、大家は回避した。野村投手コーチは「良かったよ。打つ方より投げる方が影響するからね。結局、中沢もあの回だったし」と振り返った。横浜の連敗を5で止めた立役者は、運と実力を駆使したポーカーフェースの男だった。【竹内智信】

 [2010年8月1日8時45分

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