<阪神8-3広島>◇25日◇甲子園

 広島野村謙二郎監督(44)が若手に猛ゲキだ。この日、プロ初スタメンに抜てきした育成出身の中谷翼内野手(25)が、6回に内野フライを捕球ミス。ここから決定的な3点を奪われた。9回にプロ初ヒットと初打点をマークしたが「もっとはつらつと思い切りやって、しゃきっとしたところを見せてほしかった」と、期待するだけに厳しい注文をつけた。試合は3-8と完敗し5位が確定。阪神戦の負け越しも決まった。

 野村監督はもどかしげに言った。「(中谷は)もっとはつらつと思い切ってやってほしかった。ミスは出るものだし、しゃきっとしたところを見せてほしかった。課題はたくさんありますね」。期待していただけに、厳しい言葉が口をついた。

 1-3の6回1死一塁だった。ジオが金本に内野フライを打たせた。夜空を見上げて待ち受ける中谷が、風で少し流された打球に体勢を崩す。そのグラブをはじいて、ボールはグラウンドに転がった。あわてて二塁へ送球しようとしたが間に合わず、1死一、二塁にピンチが拡大。この直後、坂の2点適時三塁打が飛び出した。

 中谷は「僕のせいで負けてしまった。せっかくスタメンで使ってもらったのに申し訳ない。投手にもチームにも」と、がっくりと肩を落とした。

 05年に育成ドラフトで広島入りし、07年に支配下選手になった中谷にとって、忘れられない夜になった。23日に今季2度目の1軍昇格。この日「7番サード」で、プロ初のスタメン出場。その舞台は、優勝争いで4万7000人近い大観衆が詰めかけた甲子園。初回にマートンの打球を無難に処理したが、痛恨のミスで指揮官の期待に応えられなかった。

 だが、打撃ではプロ初安打もしっかりとマークした。3打席凡退で迎えた9回1死一、二塁で、阪神西村から右中間を破る二塁打。しかも、これもプロ初の打点1がつく記念の一打となった。「もっと前(の打席)でなんとかしなきゃダメです。初ヒットは正直うれしいですが、自分のミスは帳消しにはならない」と中谷は猛省した。指揮官も「ああいう打撃ができるんだから」と評価はしている。

 今季80敗目を喫して、阪神戦の負け越しとともに、今季の5位も確定。苦い経験を、チームも中谷も来季への糧にする。【高垣誠】

 [2010年9月26日11時19分

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