プロ野球ドラフト会議が28日、都内で行われ、みちのくNO・1左腕、八戸大・塩見貴洋(愛媛・帝京五)が楽天から1位指名を受けた。星野仙一新監督(63)から「歴史を築こう、杜(もり)の都で」とエールを受け「2ケタ勝ちたい」と宣言した。同大の秋山翔吾外野手(ともに4年=横浜創学館)は西武3位。亡き父との約束だったプロ野球選手の1歩を踏み出す。

 制球力の鬼が星野楽天の救世主となる。東北で育った最速147キロ左腕の塩見が、東北のプロ球団に指名を受けた。吉報の瞬間、後に西武に3位指名を受ける秋山が「おめでとう!」と飛び込んできた。2人は気まずさから、別の部屋でドラフト会議を見守った。その時点ではまだ指名を受けていなかった親友が、祝福に駆けつけてくれた。それが一番うれしかった。

 会見場に姿を見せた塩見の表情は硬かった。そして言った。外れ1位だったことに「悔しい。それだけの結果は残してきたつもり」。それこそが高い意識の証明。1位候補と世間で騒がれても、緩めることはなかった。24日の明治神宮大会東北地区代表決定戦では東北福祉大(仙台6大学)相手にノーヒットノーランを達成した。

 大阪出身だが高校では愛媛、大学では青森と両親には負担を掛けてきた。それだけに「本当に感謝したい」という言葉が自然と出た。塩見が小学5年のころ、最愛の母晴美さん(48)が胃がんで入院。着替えを運び、手術にも立ち会った。高校から離ればなれに暮らし、ありがたみを切に感じた。これまでは恥ずかしくてできなかったが今年の母の日「いつも迷惑掛けて悪いな。いつまでも元気で」とメール。母からは「涙ちょちょ切れるよ~」と返信があった。

 楽天は1位指名で6球団が競合した早大・大石達也(4年)を外した。だが星野監督は「うちは左投手が足りない。大石を外して良かった。負け惜しみではないよ。(塩見には)先発ローテで大きく育ってほしい」。それを受け塩見は「こういう形で東北に残った。ファンに愛され感動を与えられる選手になりたい」と目を潤ませながら、誓った。【三須一紀】

 [2010年10月29日12時22分

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