山下よ、大きく育て!

 ソフトバンク王貞治球団会長(70)が7日、ドラフト1位山下斐紹捕手(18=習志野)を「放牧」する指導方針を打ち出した。現阪神の城島を獲得した際も2年間2軍でじっくり育て上げた。いきなり打撃フォーム改造などに着手することなく、城島流の放牧スタイルを大器山下に準備した。

 王球団会長が山下育成の基本コンセプトに「放牧」を決定した。打撃練習の時間をわざわざ確認しようと、午前中にB組練習場に足を運んだときだ。

 王球団会長

 オレは最初からああだこうだと教え込んでいくのは賛成しないね。形にはめ込まない方がいいと思うよ。言葉はあれだけど、2年間放牧みたいなものなんだから。

 育成期間に2年を充て、当面の細かい指導は控える-。かつてダイエーの正捕手に育て上げた1人の男の育成方針にダブっていた。

 王球団会長

 城島のときはとにかく試合(2軍戦)に出し続けていこうということでやったんだ。プロとしての体をつくっていくということで。

 現阪神の城島は当時の王監督に「練習でも、前の日より1センチでも1ミリでも遠くに飛ばすんだ」と指導を受けた。小さくまとまらず、大きく育ってほしいという願いが、山下放牧プランに詰め込まれている。自身の新人時代を振り返る言葉にも思いが込められた。

 王球団会長

 プロに入ってくる選手は、みんな自信持って入ってきている。それを最初から(細かい指導を)言ってもね。オレはキャッチボールの球でも重く感じたよ。ジャイアント馬場さんの球がね。ブルペンでも周りの人の球が速くて、オレだけ遅いように感じたものだよ。そうしたら、すぐ投手をクビになったけど。

 異例プランを打ち出された山下も規格外のスイングを見せつけた。午後のフリー打撃。再び王球団会長が訪れ、初視察が実現した。山下は打撃投手の球をフルスイング。29スイングで9本の柵越えだ。

 山下

 (ドラフト2位)柳田さんに監督と会長が来たときはアピールしろと言われていたし、ロングティーの成果が出ました。

 放牧プランを決定した王球団会長だけに、打撃練習後に山下に近寄って声をかけることは控えた。

 王球団会長

 打球がフワッと上がるけれど、なかなか落ちてこない。見た目の切れや迫力より、いい打撃をしていた。手の使い方がやわらかい。ロングティーでも柵越えするらしいよ。

 タカの1番星は王球団会長の方針のもと、プロとしての歩みを加速していくはずだ。

 [2011年2月8日11時24分

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