日本ハム中田翔内野手(21)の爆発気配は、本物だった。16日の阪神との練習試合(名護)に4番左翼で先発出場。4回の第2打席に右中間へのソロなど4打数3安打2打点と大暴れした。前ヤクルト監督で、入団時の日本ハムGMである高田繁氏(64=日刊スポーツ評論家)がチェック。痛烈な投手強襲の適時安打を放った8回の打席の内容から検証し、今季の大ブレークに太鼓判を押した。

 洗練された9球に、覚醒を確信する根拠があった。進化を証明する中田の第4打席目は、8回2死二、三塁。投手は、左腕の川崎だった。初球、2球目と厳しい内角直球を見逃し、その後、2球はボール。カウント2ボール2ストライクから、4球連続ファウルで粘った。

 高田氏

 この打席が一番、見応えがあった。川崎には1球も甘いボールがなかった。バッテリーにしては、最高の投球をして投げる球がなくなった。

 ファウルは外角低めチェンジアップ、そして3球連続で厳しい内角攻め。軽々とカットした。最後9球目、外角低めへ沈むチェンジアップを拾った。鋭いライナー。川崎のグラブをはじき飛ばす痛烈な適時安打を放った。中田も、高田氏と同じ充実感を得ていた。

 中田

 一番、自分がやりたいことができたのが、その打席。配球を考えてから、組み立てていけた。

 高田氏は試合後、中田に聞いた。その時の思考はどうだったのか-。

 高田氏

 彼は「外のボールを意識していた」と言っていた。常にセンター方向へ、と意識しているから体が開かない。内角に意識があると、最後の外のボールには手が出ない。体も切れているから、内角は打てるという自信があるんだろうね。

 外角に意識を置きながら、内角をさばける-。かつて日米野球で会話をしたことがある、カブスなどで活躍したメジャー609発のサミー・ソーサに打席での考えを聞いたことがある。「オレは外を意識して、センターへ打つようにしている。内角へきても、それで反応して打てるんだ」。

 他球団は昨季までは内角攻めをし、一発の可能性が少ない外角で勝負するのが、中田の基本的な打ち取り方だった。中田は「内角はファウルでもいいくらい」の意識だったと明かした。

 この日の結果でクローズアップされる4回の第2打席は、やや内寄りに甘く入った直球系のボールを右中間席へ運んだ。差し込まれながらも、力で押し込んだ。

 高田氏

 完璧にとらえたらレフトへいっていただろうね。でも差し込まれても打てる。我々でいったらヒットゾーンが広がるというが、中田の場合はホームランゾーンが広がったのではないか。幅のある打撃ができている。間違いなく、今年は打つだろうね。

 今季対外試合3戦で3発を放った。好調を裏付ける、中田が主導権を握った9球の攻防があった。4年目の今季、中田は目覚める。【取材・構成

 高山通史】

 [2011年2月17日11時24分

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