半歩ずつ歩を進めながらの3試合連続ドローだ。楽天は23日、韓国サムスンとの練習試合(赤間)で2-2の引き分け。投手陣が好調で20日の巨人戦(那覇)から1-1、1-1とロースコアの接戦続き。勝利目前の9回に追いつかれてしまった。だが試合を重ねるにつれ消極的なミスが減り、キャンプから掲げてきた機動力重視の姿勢も垣間見えてきた。今日24日はヤクルトとの練習試合(浦添)。“4度目の正直”で星野仙一監督(64)の初勝利といく。

 試合前のシートノックを、仁王立ちの星野監督が一塁側ベンチで凝視していた。円陣では仁村徹作戦コーチが「ビシッとできるまで、これからいくらでもやらせるから。分かったな!」とゲキを飛ばした。およそ練習試合とは思えない緊迫感が充満していた。

 したためられたスタメンに、シンプルかつフェアな星野監督の方針が示されていた。若手主体で臨んだ前日22日は、お見合い、見逃し三振と、最も嫌う消極的なミスが出た。1軍入りをうかがう若手で連続スタメンは横川、枡田。キャンプ後半からアピールを継続してきた2人だけだった。結果を出した者を使い、淘汰(とうた)していく。志願出場の岩村はじめ、7番までレギュラーで固めた。

 同じ失敗でも、この日出たものは種類が違った。昨季78盗塁からの3倍増を目標に掲げた走塁の意識改革。紅白戦5試合で16個マークも、対外試合では1回の鉄平が初めてだった。だが永池内野守備走塁コーチが「意識付けしてきたが『失敗したくない』という気持ちが、前への気持ちを鈍らせてはいけない。ミスにいい悪いはない。でも狙う意図を感じたミスだった」と説明した、風穴をあけるワンプレーがあった。

 5回1死満塁の場面。鉄平のライナー気味の中飛で、走者全員がタッチアップした。一走内村は俊足で、バックホーム想定のどんぴしゃスタート。しかし中→遊→二とカットプレーでアウト。勝ち越し成功も攻撃は終わった。内村は「監督は『シーズンでは100%の場合で行くように』でした。一塁ががら空きだったので、加速していても戻るべきだった」。失敗から自分の引き出しを得た。

 星野監督は「試合っぽくはなってきたが、もっとどんどんいかなくては」と、ゆっくりした口調だった。つきまとう「鉄拳制裁」「闘将」のイメージ。ましてや勝ち慣れていないチームに大物監督が就任すれば、選手が必要以上に意識するのはやむを得ない。怒るとベンチは凍り、笑うとはじける。厳格な指揮官の喜怒哀楽がそのまま、選手に出ている。特に1軍当落線上にいる選手には今、2つの勇気が求められている。1つは相手に立ち向かう勇気。もう1つは、監督の前で、失敗を恐れず積極性を出す勇気。内野陣で最も低い姿勢で打球を待ち受けていた岩村は言う。「準備が大切だ」。この言葉に引き分けを勝ちに転じる地力アップのヒントがある。【宮下敬至】

 [2011年2月24日9時9分

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