巨人のドラフト1位沢村拓一投手(22=中大)が、新人離れした修正能力を発揮した。24日、韓国ハンファとの練習試合の4回に2番手で登板。プロ初の対外試合で連打を浴びて無死二、三塁のピンチを招いたが、落ち着きを取り戻すと、連続三振を奪うなど後続を抑えた。続く5回は無安打に封じ、2回2安打無失点で4奪三振。次回の登板は3月2日の西武とのオープン戦(東京ドーム)。3月25日の開幕に向けて、即戦力右腕は着々と前進し続けている。

 いつもと違う。何か違和感を感じた。沢村の剛速球が通じない。先頭の3番打者に投じた6球目。この日最速の149キロ直球が中前へ。続く4番打者には144キロ直球が右翼線へ。簡単にはじき返された。不利なカウントから速球を狙われ、無死二、三塁。プロ入り後、初めてのピンチだ。

 孤独なマウンド上。並の新人ならそのまま崩れたかもしれない。沢村はここからすごみを見せた。「緊張はしました。(体の動きが)硬いなと思って。腕を振ろうと、キャッチャーミットめがけて投げました」。自ら気付き、体の動きを修正した。後続を2者連続の空振り三振。さらに力ない左飛に仕留めた。「走者を本塁にかえさなければいいと思っていた」。緊張した初の対外試合で、焦らず、修正能力の高さを示した。

 中大時代から崩れるときの傾向は見えていた。担当の井上スカウトはこう証言する。「去年の春、悪いときは、カウントを悪くしてストライクをとりにいって崩れることがあった。今日は切り替えられている」。頼もしく進化している姿に目を細めた。投手にとっては、試合中の気持ちの切り替えや、微妙な狂いを感じ取って修正する能力は生命線にもなる。大物ルーキーはそれもクリアしていた。原監督は「順調に正しい階段を上っている。ピンチというのはよくあるものだけど、そこから落ち着いて投げていたのはよかった」と、好印象だった。

 2イニング目は投げるテンポを変えた。ベンチで川口投手総合コーチから「リズムが悪くて、いつもより早い」と指摘された。投げ急いだ1イニング目は変化球が決まらなかったが、スライダーと直球のコンビネーションでカウントを有利にした。4回の21球に対して5回は11球で、2三振を含む3者凡退。同コーチは「力で打ち取れる球を使えるということは評価しないとね」と、日に日に成長する1年生を大いに褒めた。

 試合前、沢村は「(準備は)万全です」と力強く答えた。「阿部さんの胸を借りるつもりで投げたので楽しかったです」と頼もしい。次回は3月2日に先発。オープン戦だが、巨人にとっては今年の東京ドーム“開幕戦”だ。大舞台にも「やるべきことをしっかりやりたい」と前を向いた。まだまだ進化する可能性を秘めている。【斎藤庸裕】

 [2011年2月25日9時14分

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